姉が帰ってくる、その前に―ラスト5分でイけるのか、イけないのか―
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姉が帰ってくる、その前に―ラスト5分でイけるのか、イけないのか― (ページ 1)
ドアを開けると、典弘くんが立っていた。
「あれ、あいつは?」
「お姉ちゃんは今出かけてます。何か急にスマホ調子悪くなったみたいで、ショップ行きました」
私は部屋着のまま、典弘くんの応対をした。
彼は、姉の彼氏だ。
「そうなんだ。困ったなぁ。あいつと出かける約束してたのに」
彼は頭を掻きながら眉根を寄せる。
「よかったら家上がって待ってますか?」
私が尋ねると、典弘くんの表情が明るくなった。
「そうさせてもらえると助かるな。上がっていい?」
「いいですよ」
ドアを大きく開くと、典弘くんはスニーカーを脱ぎ、玄関マットに足を下ろした。
「あいつの部屋、入っててもいいかな?」
彼の言葉に、私は一瞬悩んだ。
姉は、勝手に部屋に入られることを嫌う人だ。
「あ、できればリビングで待ってもらってもいいですか」
私の言葉に、典弘くんは苦笑いを浮かべた。
「あぁ、あいつ結構神経質だからね」
「そうなんです。多分散らかってると思うし」
私は彼をリビングに通すと、緑茶をグラスに注いだ。
ソファに座る典弘くんは頭を下げた。
「ありがとう、ひよりちゃん」
典弘くんに私の名前を呼ばれたのは初めてだった。
心臓がドクン、と高鳴った。
「私、これから見たい番組あって。ここで見ていてもいいですか?」
私は少し緊張しながら申し出た。
「全然いいよ。じゃあ俺、床に座るね」
典弘くんはそう言って腰を上げた。
「いや、私が床に座るんで大丈夫ですよ!」
私は慌てて顔の前で手を振った。
「いや、全然気にしないで」
「典弘くんこそ気を遣わないでください」
「本当に大丈夫だから」
「私の方こそ大丈夫です」
しばらく押し問答が続いた。
そして、私と彼が導いた答えは――。
私と典弘くんは、二人でソファに座った。
我が家のソファは三人掛けなので一人分の隙間が空いている。
とはいえ、手を少し伸ばせば彼の手がすぐそこにある。
見たい番組が始まった。
けれど私は全く集中できなかった。
典弘くんの横顔を盗み見る。
彼の横顔をこんなに至近距離で見つめたのは初めてだった。
「これ、前やってたやつの再放送だね。懐かしいなぁ」
典弘くんはテレビに視線を向けながら、目を細めている。
「うわっ、この女優さんめっちゃ若いね」
彼の言葉なんて、私の耳には入らない。
「…ひよりちゃん?」
私の方を向く、典弘くん。
私は背筋を伸ばし、「はいっ」と返事をした。
「どうしたの?」
「いえ! 大丈夫です」
「これ見たかったんでしょ?」
「あ、はいっ! これ面白いですよね~」
私は微笑みながら、テレビをじっと見つめた。
それでも、典弘くんの視線を感じる。
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