新入社員にトロトロに溶かされ、部下の顔に自らまたがった上司失格の私
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新入社員にトロトロに溶かされ、部下の顔に自らまたがった上司失格の私 (ページ 1)
入社して十五年、現在係長の恵里佳は、厳しくて近づきにくい上司として有名だった。黒髪のストレートヘア、黒縁の眼鏡、いつもパンツスタイルでヒールを履く姿も、きつい印象を与えるには十分だ。
そのうえ、恵里佳は無駄なお喋りをしないこともあり、誉められて伸びるという若手社員には、とにかく厳しく映っていた。
最悪なことに、もう一人の男性上司は恵里佳と正反対の部下に媚びるタイプ。なので、恵里佳が余計に淡々としたクールな人という印象がついていた。
恵里佳がもう少し手取り足取り優しく指導していたら、何とか残っていた社員もいるのではないかと、噂になったこともある。
でも、仕事で結果を出す恵里佳には、誰も何も言うことはない。
恵里佳自身も噂を気にしていないわけではないが、否定も肯定もする時間もなく、目の前の業務をこなす日々だった。
そして、今年も一名の女性と、二名の男性が新しく入社してきた。恵里佳は数年ぶりに男性社員の担当になった。
人事部から資料を渡され写真を見ると、清潔感のある今どきの男の子、それが冬弥だった。
「優しく接してやってくれよ」
「もちろんです」
、
上司にそう言ったものの、恵里佳は大事な案件を任されていて、気配りをできる余裕はなさそうだ。
恵里佳が入社した当時は今とは違ったから、ありとあらゆるハラスメントを受けてきた。時代の流れとは言え、人間力のない若手に叱咤激励をぶつけないことはよくないと恵里佳は思っている。
でもまぁ、彼らはそんなことは気にしないのだ。だから、恵里佳も最初から感情移入することがなくなってしまった。
*****
デスクに戻ると、各担当上司のところに新入社員が挨拶に来ていた。冬弥が、恵里佳の机の前で立っていた。
「ごめんなさい、お待たせして」
恵里佳は背後からそう言って、机に回る。
「お疲れ様です、冬弥です。よろしくお願いします」
冬弥は笑顔だった。明るく、素直な男の子、そんな第一印象だった。
「この資料に目を通しておいてくれる?質問は後から受付けるから」
「はい、わかりました」
明るくはっきりと返事をした冬弥の笑顔には、安心感が見えた。
噂で聞いていたクールで厳しい上司は、小柄でバタバタとしている。その様子に人間味を感じ、少しほっとしたのだ。
こうして二人は毎日顔を合わすことになった。
恵里佳が指示を出すと、冬弥はてきぱきと動いた。何より、わからないことを、わからないと確認する姿勢は、とても評価が高かった。
そして、本当に明るく前向きなのだ。
「係長、この資料をまとめておきました!」
「ありがとう」
「来週の会議のアジェンダです」
「助かるわ」
気が利くのに、出しゃばらない冬弥の仕事ぶりに、二か月が過ぎたころには、恵里佳は冬弥をすっかり頼りにしていた。
そして、上半期最後のプレゼンで、恵里佳は社内一の評価を得ることができたのだ。
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