まだ知らない疼きを、あなたが教えてくれた夜に私は大人になった

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まだ知らない疼きを、あなたが教えてくれた夜に私は大人になった (ページ 1)

土曜日の夕方、雲間からこぼれる陽がビルの窓に反射していた。

少し早足になった千帆は、太陽と並んで駅前のホテルに向かって歩いていた。
胸の奥がきゅっと締めつけられるように高鳴る。いつもとは違う――そんな気配が、彼の横顔から漂っていた。

ホテルのロビーは静かだった。柔らかな照明と、どこか甘い香りが漂っている。
フロントで手続きをしている太陽の背中を、千帆は黙って見つめた。今日の彼は、ほんの少し大人びて見える。白いシャツの襟元、腕時計をはめた手の動きまで、いつもよりゆっくりで、自信に満ちているようだった。

「千帆」

名前を呼ばれて顔をあげると、太陽がカードキーを片手に微笑んでいた。
その笑顔に、緊張と期待がないまぜになった吐息が、千帆の喉元からこぼれる。

無言でうなずくと、彼の手がそっと千帆の手を握った。指先がふれた瞬間、胸の奥が、ふっと熱を持って膨らんだ。
エレベーターに乗り込むと、二人きりの静寂に包まれた箱の中で、千帆の鼓動はますます強くなる。

「怖くない?」

太陽がぽつりとつぶやいた。
その声は、ふだんのような軽さではなく、どこか深くて優しい響きを帯びていた。

「ううん、大丈夫」

千帆はかすかに笑った。

でも本当は、大丈夫じゃない。はじめての夜を、自分が今から迎えようとしていること。
それを思うたび、胸の奥が震えて、足元が少しだけ揺らぐようだった。

そして――
ドアが開き、ふたりは静かに部屋に入った。

*****

部屋の扉が静かに閉まったとき、世界の輪郭が少し変わった気がした。
カーテン越しの淡い光、ベッドの白いシーツ。わずかにかかった冷房の音が、鼓動の速さと重なって千帆の耳にしみ込んでくる。

「座って」

太陽がソファを指さした。
千帆は言われたとおり腰をおろす。太陽はミネラルウォーターの栓を抜き、グラスに注いで差し出してきた。その仕草さえ、どこか特別な意味を帯びて感じられる。

「緊張してる?」

グラスを受け取った指が、ほんのすこし震えた。
千帆は小さくうなずくと、太陽は笑って彼女の隣に座った。
すぐそばに感じるぬくもりが、じわりと身体に伝わってくる。言葉を交わさなくても、ふたりの間に流れるものは、確かに変わっていた。

太陽がそっと、千帆の手を握った。
その手はあたたかくて、やさしい。けれど芯にある何かは、確かに男のものだった。

「怖くなったら言って。無理は、させたくないから」

「…ううん、むしろ…うれしいの」

そう言った自分の声が、思いのほか熱を帯びていた。
太陽の目が細くなり、ついばむように唇が重なってきた。

最初は軽く、ためすようなキスだった。
でも、それが何度も繰り返されるうちに、熱はゆっくりと千帆の内側へ降りてくる。

「ん…」

太陽の舌が、ためらいもなく千帆の唇の奥に入り込んだ。

ぬるりとした感触が舌をなぞり、くちゅり、と静かな音がふたりの間に落ちた。
舌と舌がふれ合うたび、下腹の奥がじんわりと疼き始める。

「千帆、かわいい」

そう囁いた太陽の声が、耳朶をなぞるように落ちる。

くちづけはそのまま首筋へ、鎖骨へ、そして服の隙間へと降りていった。
ボタンがひとつ、またひとつ外されてゆくたび、胸の奥に押し込めていた期待と羞恥が、とろりと溶け出してゆく。

「もっと、触れていい?」

小さくうなずいたそのとき――
太陽の指先が、やわらかな曲線にふれた。

*****

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