激しい雨の日、手負いの獣となった彼に縋るように求められて… (ページ 2)

シン君はいわゆる、複雑な家庭な子供だった。

小学生の頃から問題児だったが、中学に入ってからは裏社会の人間と付き合うようになり、学校も社会も彼を見捨てた。

中学2年生の夏、夏休みに部活動で学校に来ていた私は、ちょっとした好奇心で誰もいないはずの自分の教室を覗きに行った。

誰もいないと思った教室に、シン君はいた。

窓際の席の机の上に座り、けだるげに真っ青な空を見上げていた。

その光景を、私はなぜか、とても美しいと思った。

その光景を壊したくなくて、声をかけることもせずにその場を去った。

そのことを私は後悔することになる。

夏休み明け、シン君は学校から消えた。

学校は問題児である彼が消えてくれてむしろホッとした雰囲気だった。

あの日彼が、誰もいない教室にいたのは彼なりの別れの儀式だったのかもしれないと思った。

まるで最初から彼という存在などなかったかのような教室を見て、私は泣いた。

あれから10年近い年月が経った。

*****

私が猛アタックして、私たちが嬢と客の関係から、プライベートで会う関係になるまでに時間はかからなかった。

シン君は昔と変わらず、無口な人だった。

愛の言葉はもちろん、日常のささいな話題にさえ、返事があることは少なかった。

それでも私は愛されていると信じていたし、幸せだった。

けれど、そんな日々は長くは続かなかった。

不意に、シン君が消えた。

シン君の職業を考えると、どんな目にあっていても不思議ではない。

私はいても立ってもいられない気持ちになり、けれどどうすることもできなかった。

もしバイトに行っている間にシン君が来たら…、と思うと、バイトにも行けなくなった。

ただ毎日、狭い部屋の中でシン君の無事を願っていた。

*****

その日は強く雨が降る日だった。

昼間でも部屋の中は薄暗くて、けれど私には照明をつける気力もなかった。

シン君と連絡がとれなくなって1カ月が経っていた。

時間が過ぎるほどに嫌な想像ばかりをしてしまい、私は食事すら満足にできなくなり、1日の大半を寝たまま過ごした。

今日もバイトをサボってしまった。

このまま、無気力にベッドに横たわったまま、腐っていってしまうのではないかと思った。

激しい雨の音しかしなかった室内に、不意にガタン、と玄関のドアが音を立てた。

ビクリとして体を持ち上げてそちらの方を見る。

次の音はそんなに大きくはなかった。

けれど、そこに誰かがいる気配がして、その誰かがドアを叩いているのだとわかった。

恐怖心に煽られながら、けれど知らないふりをすることもできず、私はブランケットを体に巻きつけて、玄関に歩み寄る。

覗き穴から外を見ると、倒れている人間のようなものが見えた。

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