風邪をひいてかかりつけの病院を受診したら―大人の余裕に隠れたSな町医者 (ページ 5)

「僕がいじめてるみたいじゃない」

利人さんが苦笑いを浮かべて、わたしを覗き込む。

柔らかい視線に胸が苦しくなった。

「具合は大丈夫?」

「だい、じょうぶ…っ…」

子供みたいな返事が恥ずかしい。

「お腹、ちょっと触診してもいい?」

「はい…」

ブラウスの釦を外して、利人さんの手を迎えた。

熱い手がみぞおちを軽く押す。

「痛い?」

「痛くない」

わたしはすんすんと鼻を啜りながら答えた。

むしろ、手のひらの熱が気持ちいい。

「うん。もう大丈夫みたいだね」

利人さんが手を離そうとする。

それが、堪らなく淋しくて、わたしは思わず大きな手を捕まえてしまった。

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