電車で隣に座った男に狂わされていく私。ストーカーになり、男を追う私は電車の中で… (ページ 4)

私が泉の姿を再び見たのは、あの夜から1週間ほど後のことだった。

いつもの電車で泉を見ることはないので、一本早い電車、一本遅い電車と、毎日違う電車に乗って、泉が乗ってくる駅でいったん降り、泉を探した。

何度か見かけたことがあるので、乗車位置は大体同じはずだ。

泉のアパートにも、一度様子をうかがいに行った。

時間が早かったのか不在のようだったので、駅に戻って改札が見えるところにあるカフェで、何時間も待ったけれど、改札を通過する泉の姿を見ることはなかった。

なぜこんなことをしているのか。

何が私を駆り立てるのか、わからない。

泉と会ってどうするつもりなのか。

会いたいのかすらも、わからない。

落としたイヤホンを返す、というのがあの夜、泉を追いかけた自分への言い訳に過ぎないことには気づいている。

電車に乗り込む泉を見つけたので、私もそのドアから乗り込む。

電車はまだそれほど混んでいなくて、泉は、乗り込んだドアと反対側のドアの中間のあたりで、スマホに目を落としている。

ここまでストーカーして、やっと姿を見ることができたのに、泉は私に気づかない。

ただの自意識過剰だった。

メッセージの着信音が鳴った。

彼からだ。

今日は一緒にお昼を食べよう、という内容だった。

返信しようとしたときに、減速する電車が大きく揺れ、スマホを落としてしまう。

拾おうとして体を屈めると、私のスマホは、私の背後に立った誰かの足に踏まれてしまう。

紺のコートの袖から突き出した手が、私のスマホを拾い上げる。

泉だ。

全身の血が沸騰して、私は動けなくなる。

電車が次の駅に停まり、たくさんの乗客が乗り込んでくる。

私は後ろから泉に抱きすくめられて、人の波に揉まれる。

腰に泉の硬くなったものが当たっている。

泉は少しずつ、人波を掻き分けて移動し、私の身体は反対側のドアに押し付けられる、

終点の一つ手前の駅まで、開かないほうのドアだ。

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