平凡なぬるま湯につかった生活から私を引き離したSNS (ページ 2)

『久しぶり。名前見つけて、思わず友達申請してしまった』

『久しぶり』

『今、実は東京に居るんだよ。栞も東京みたいだね。フェイスブック名前変わったってことは、結婚してる?』

『うん。結婚した。子供も一人居る。今大阪じゃないんだ』

『東京で一人暮らししてる』

隆は、離婚して東京に戻ってきたらしい。

しかも、東京と言っても、本当に偶然同じ路線の近くに住んでいた。

結婚相手もあの時の女だったようだが、あの時妊娠したのに彼女は中絶したらしい。

責任取って結婚したらしいが、うまくいかなくて、結婚生活は5年ともたなかった。

『良かったら会って話しない?』

隆は昔のことをどう思っているのだろうか?

でも、向こうが何も思っていないのなら、意識することはないのではないだろうか。

最寄りの駅では人の目がある。

3つ離れた駅前のロータリーに車で迎えに行くと隆は言った。

私たちは、連絡を取り合った1週間後、再会することになった。

駅前のロータリーに11時待ち合わせをした。

車の車種を言われたけどよく分からない。

青い車で行くから。と言っていた。

この日はとても暖かい日だった。すっかり桜の花は散って、青い新芽が芽吹き、葉桜に変わってきている。

駅前の桜の木は青々としていた。

車が止まった。

隆だった。

運転席から懐かしい顔をのぞかせた。

そして、車から降りて来た。

私は一礼した。助手席のドアを開けてくれる。

隆の車に乗った。

『ゆっくりできるのかな?』

隆が一番最初に聞いた。

『夕方までに帰ればいいけど・・・』

『そっか・・・分った』

車が動き出す。

『この辺、まずいんじゃない?ご近所さんとか知り合いとか・・・』

その通りだった。

この辺じゃ広範囲にわたって、危ない。

誰が見ているのか分からないし、万が一誰かにあることないこと言われても。。。

『うん・・・かなりまずいと思う』

そう言うと、高速近くへ車を走らせると、ラブホの駐車場に入った。

『えっ?ここ?』

『二人きりで話したいし、誰かに見つかって困るのは栞だろ?』

ラブホなんて何年ぶりだろう。

旦那さんとも夫婦生活が無くなって10年近くは経つ。

まして、ラブホなんて最後に行ったのがいつだったのか・・・

ちょっと戸惑いと背徳感が湧いてしまう。

少しオドオドしながら、隆の後ろを歩いて部屋に入った。

最近建て替えをしたらしく、ラブホはとてもきれいだった。

ラブホ感というよりもビジネスホテルを少しゴージャスにした感じで、明るく、清潔感溢れる雰囲気だった。

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