昨夜の記憶が曖昧な中目を覚ますと監禁されていて…拒絶できないぬくもり (ページ 6)

私に優しく、あたたかく接してくれる人なんて、過去にいなかった。

親からもクラスメイトからもできのいい妹とひたすら比較され続けたし、高校ではじめてできた彼氏とのセックスはつらかった。

胸とクリと儀式的にちょんちょんと触ったり、摘まんだりすれば挿入できると思っていたらしく、「千夏って不感症だよな」と言われたくらいだ。

妹の方が美人、妹と付き合いたかったと言われ、我慢していた涙が溢れたら、

「冗談通じないとかキツイ」

と言われてフラれた。

以降、男の人が苦手になっちゃったわけで

唯一、触れていたいと思った男性は顔も知らない相手とか、私悲惨すぎ……。

ふと、彼は後ろから抱きすくめる体制のまま、私の手をとり、重ねた。

恋人みたいに繋ぐと、彼は私の頬にちゅっとリップ音を立ててキスをする。

大きくてごつごつした掌は、バイト先の宇佐美先輩に似ていて。

――あっ……。

不覚にも、小さく声を上げてしまいそうになった。

宇佐美先輩は私より二つ年上で、バイト先のカラオケ屋ではみんなが頼りにしている。

失敗したとき、一番にフォローに入ってくれるから、私も頼りにしていたんだけれど、先輩はそれがうざかったのかな。

ついに昨日

「お前、向いてないよ」

って言われてしまった。

酔っ払いに絡まれること数十回。

注文で部屋に入るとそのまま出して貰えないこと数十回。

あげくセクハラされまくって、バイト中に泣いたことはもう数えられなくて、ぶっちゃけ自分でもごもっともですって感じ。

仕事以外で喋らないし、

雰囲気も冷たいし、

表情も恐いけれど。

あの大きな手が、大丈夫だよって、私を慰めてくれている気がしていたんだ。

先輩からすればそれが全部、迷惑だったのかな……。

ぎゅっと、心が締め付けられて、悲しくて、苦しくて……。

じんわりと濡れていく寂しさに、私は目隠しの布が濡れていくのを感じる。

やっぱり、目隠しされていてよかったのかも。

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