残業してたら憧れの上司と2人きり。がんばる私を見ていてくれてありがとう

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残業してたら憧れの上司と2人きり。がんばる私を見ていてくれてありがとう (ページ 1)

静まり返ったオフィスには、パソコンのキーボードを叩く音だけが響いていた。
時刻は21時過ぎ。いつもなら誰より先に帰る庶務の私も、気づけば一人きり――…じゃなかった。

「…進んでる?」

声がした。隣のデスクの上司、祐介先輩だった。

「はい、あともう少しです」

私は顔を上げずに答える。焦る素振りは見せないが、内心は少しだけ慌てていた。
“このまま帰らずに見張られるのかも”って。

けれど、祐介先輩は書類を手にしたまま、疲れたように椅子にもたれた。
ネクタイを少し緩め、上着はすでに背もたれにかかっている。

「意外と、がんばり屋なんだな」

ぽつりと、呟くように言われた。ちょっとドキっとしたけどそんな素振りは見せないように平気な顔で答える。

「…先輩こそ、いつも遅くまで残ってますよね」

私は手を止めて顔を上げる。
先輩の横顔が、思っていたよりも近かった。

「見てるんだよ。誰がどんなふうに働いてるかくらいは」

静かな声。でも、真っ直ぐで芯のある声。

「報われないと、思ってるだろ」

図星だった。
最近は、空回りすることばかりで。

言葉を返せずにいると、先輩が私のモニターを覗き込んできた。
スクリーンの青白い光に照らされて、彼の輪郭がくっきり浮かぶ。

近い。

息を飲むほどの距離。
その息づかいすら聞こえてしまいそうで、私は一瞬、画面から目をそらした。

「これ…ここの式、逆だな」

祐介先輩が指差したのは、Excelの関数。
そんなに重要なミスじゃない。でも、今の私には、なぜか恥ずかしかった。

「あ、すみません…」

声が上ずる。

「緊張してる?」

からかうような笑み。
でも、目だけは真剣だった。

私は何も言えず、うつむいた。
パソコンの光が、指先をかすかに照らす。

「…仕事ってさ」

先輩がふと立ち上がり、窓際に向かう。

「やる気が空回りすると、しんどいよな。俺も昔、同じだったよ」

ブラインドの隙間から見える夜景に、彼の背中が溶け込んでいく。

「でも、そういう時こそ、人の顔が浮かぶ。…誰かの役に立ちたくて、がんばってるんだろ?」

沈黙。

私の胸に、何かがぽとりと落ちた気がした。

「…はい」

気づけば、そう答えていた。

夜のオフィス。
明かりはもう、パソコンと非常灯だけ。

2人っきりで、心があったかくなってしまって、つい祐介先輩に甘えたくなる…。優しく抱きしめられてみたい…。

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