断罪され辺境送りになった悪役令嬢、恋心を諦めていた護衛騎士と二人きりになってしまい…!?

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断罪され辺境送りになった悪役令嬢、恋心を諦めていた護衛騎士と二人きりになってしまい…!? (ページ 1)

世渡りが下手な自覚はあった。伯爵令嬢として転生した私は、よくある断罪ルートに入らないようにそれはそれは気を遣って過ごしてきたのだ。

けれどその気遣いと生来の気の弱さがあだとなり、私はヒロインをいじめた主犯格に仕立て上げられてしまったようだ。

「お前は領地で平民暮らし、かぁ…」

お父様が手を回してくれて処刑はなんとか免れたものの、私は爵位を剥奪され平民の身分に。実家からの金銭的支援があるだけましだが、それもいつまで続くやら。

ついてきてくれたのは幼い頃から側仕えのメイドと、護衛の騎士の計二人のみだ。彼らを飢えさせる訳にもいかない、と私は与えられた家で古民家カフェを経営することにした。もちろん前世での知識をここぞとばかりに利用させてもらってね。

労働者に向けた、持ち運びしやすいおにぎりやサンドイッチのお弁当が売れて起動に乗りはじめていた頃。夜に翌日の仕込みをしていると、少し疲れが出たのかキッチンでふらついてしまった。

「っ大丈夫ですか、お嬢様」

「あ…ありがとうルカ。っていうか、もうお嬢様って呼ぶのやめてって言ってるでしょ」

「すみませんついクセで…体調が優れませんか、アイリさん」

顔を覗き込むようにしながら名前を呼ばれて、思わずどきりとする。赤くなった顔を勘違いしたのか、ルカは寝室にお運びしますね。と言ってあろうことか私をお姫様抱っこしたのだ。

「きゃあっ!ちょ…歩けるから!」

慌てる私をクスリと笑って一瞥してから、そのまま彼が寝室のベッドへと運んでくれる。

「淑女の寝室に立ち入ってすみません。けれど今は貴女の体調が大事なので」

ふわりと優しくベッドの上へ降ろしてもらう。熱を確認してすぐに下がろうとする彼を、私はとっさに引き止めていた。

「もう淑女じゃない…ただのアイリよ。ねぇルカ、もう少しここにいて」

「っお嬢さ…いや、アイリさん。だめですよ、そんなことを言ったら男は勘違いしてしまいます」

…勘違いしていいと言ったら、流石に呆れるだろうか?だけど私は、優しくて勘当されても付いてきてくれた彼の事がもうずっと前から──。

恐る恐る見上げると、彼と目が合う。その瞳に思わず魅入った。ひどく真摯な目がこちらを見ていたから。

「俺は…貴女を大切な人だと思っています。だからこそ、ここに居たら貴女を今傷付けてしまう可能性がある」

言葉の意味と、その誠意に気付いて胸が熱くなる。もう身分の差はない。ためらう理由が、無かった。

「…私…私もルカの事が大切なの。だから、あなたになら何をされても傷付かないわ」

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