雪の夜に訪れた二人の熱い秘密の時間。たった一度の交わりを忘れられない私の体が疼く。

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雪の夜に訪れた二人の熱い秘密の時間。たった一度の交わりを忘れられない私の体が疼く。 (ページ 1)

桃子と慎二は同じ学習塾の塾講師としてキャリア十年目をむかえる。たまたま同じ年齢だったこともあり、中途採用のメンバーの中でも心許せる仲間として一緒に頑張ってきた。

 桃子は英語、慎二は数学がメインで指導している。同じ生徒を担当することが多いので、情報共有のため頻繁に話す機会も多い。

 勤務時間が一般の会社員と少しずれていて、仕事帰りに開いている店も決まっているので、独身の二人は一緒に食事をすることも多かった。

 真面目に仕事に取組み、生徒たちの信頼も厚い。何より、二人とも余計なことに口出しをせず場を丸く収めることが得意なので、面倒なトラブルが発生することもない。

 周りからは「二人は似ている」と言われるほど、仕事仲間としてはベストな関係を保っていた。

 そんな二人は、一度だけ関係を持ったことがある。今から三年前の雪の夜。

 このまま誰にも知られず、墓場まで持っていくあの夜の出来事。そう理解はしているが、桃子は最近またあの夜のことを想って悶々とすることが増えてきた。

 慎二はどう感じているのだろうか。とても怖くて聞くことは出来ないが、時々桃子を見つめる目は、あの夜の視線と同じに見える。

 いまだに桃子の体に染みつく慎二の感覚。もう一度感じたいけれど、次は歯止めが利かなくなることはわかっている。

 だからだめなのだと自分に言い聞かせ、桃子は必死で欲求を押さえているのだ。

*****

 その日、天気予報では深夜から雪だと言っていた。まだ今年に入ってはドカ雪はないが、しつこくニュースで警戒するように言われていたので、桃子は車通勤をやめて電車で出勤していた。

 生徒たちはいつも通りに出席していたが、午後七時を過ぎたころから雪の気配を感じさせる凍り付きそうな冷たい風が、入口からぴゅーぴゅーと入り込んでいた。

「お願いだから十時まで降らないでほしいなぁ」

桃子と慎二は最終クラスを担当している。二人は階段の窓から外を眺め、天気を気にしながら教室へと向かった。

 授業が終わり生徒を送りだすと、外は猛烈な吹雪に変わっていた。

「お疲れ!」

「これはマズイね」

「車?」

「ううん、念のため今日は電車で来たんだけど…」

「電車、止まってるよ」

「うそでしょ!」

 ここ数年、天候によって計画運休されることは多いが、まさかこんなに早く運休されたとは意外だった。

「どうしよう…」

「送ろうか?」

 慎二がそう言ってくれるのは有難い。

「うん、ごめんね。遠回りになるけど」

「いいよ別に」

 二人はそのまま片付けを終えると、数人の講師を残して慎二の車で桃子のアパートに向かった。

 ところが、やはり雪をなめてはいけない。

 あっという間に目の前には銀世界が広がり、今年初めての本降りにノーマルタイヤの車がスリップし止まっている。

 国道に出るまでにすでに数台の車が路肩に寄せられ、進んでいるのかどうかのペースでしか動いていないのだ。

「これは帰れないパターンだよね」

「ほんとだ、気が遠くなりそうだ」

「私、塾に戻ろうかな」

「寒いからやめとけよ。俺んとこ来る?」

 何も起こるはずのない二人だから、こんな会話が成立していた。慎二のマンションは車で五分ほどだから、このまま何とか進めばそれほど時間はかからない。

「ほんと、なんかごめんね」

 前回、桃子が慎二の家を訪れたのは去年の夏だった。後輩たちとバーベキューを楽しんで、そのままのノリでみんなで泊まった。

 もちろん一人で泊まるのは今回が初めてだ。

 猛吹雪の中なんとか車を走らせ、コンビニに寄って買い物を済ませると桃子は何のためらいもなく慎二の部屋へ上がった。

「綺麗にしてるよね」

「そんなことないよ、掃除なんて一か月に一回ほどだしさ。着替えこれでいい?」

「ありがとう。早速着替えさせてもらうわ」

 桃子は洗面所に行き、慎二のスエットに着替える。他人の部屋着を借りることに抵抗がないわけではないが、慎二は遠慮をさせない空気づくりが抜群にうまい。

 だから桃子も少し厚かましいほどに慎二に甘えられるのだ。

「でかすぎだな」

「だってXLでしょ」

 同じく部屋着に着替えた慎二が桃子を見て笑う。慎二は百七十センチほどの中肉中背、桃子は百五十三センチのぽっちゃりだから、袖も裾もだぼついている。

 まるでペアルックのカップルのようにホットカーペットに座り込むと、二人は早速乾杯をした。

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