偶然再会した先輩にお願いしてみた痴漢ごっこ。妄想が現実に変わる快感に溺れる私 (ページ 2)

 その拓馬先輩に似た男性が隣に座っている。しかもほんの数十センチの隙間を保って。

 胸の鼓動が高鳴り呼吸が苦しくなる。しばらく悩んだものの、朱里は思わず言葉を発していた。

「あの…、すみません。○○高校バスケ部の拓馬先輩ではありませんか?」

「え?俺?はい、そうですけど」

「やっぱりそうでしたか。私、後輩だったので先輩のことをすごく覚えていまして」

「え?一つ下?」

「いえ、先輩が高三のときに一年でした」

「そっか、あー、なんとなく思い出した」

 そんなはずもないし、その目が嘘をついているのはわかっていたが、朱里にはそんなことはどうでもよかった。あの拓馬先輩が目の前にいるという事実が大切だった。

「バスケ部の後輩か。懐かしいね。仕事なの?」

「はい。新大阪まで」

「一緒だよ」

「先輩も出張なんですか?」

「うん、まぁね」

 拓馬にとっては、暇つぶしができた感覚だろう。お互いの自己紹介を済ませ、高校時代の話をしながら二人は新大阪までの時間を楽しんだ。モテてきたに違いない。拓馬は営業マンらしく話題豊富で、朱里との距離を簡単に縮めていた。

「夜、一緒に食べる?」

「いいですね」

 ひとりで食べるより、二人の方が楽しいに決まっている。話をすればするほど拓馬が生粋の女好きだと確信していた朱里は、あの十六歳のときに見た生々しいキスの再現をかすかに期待していた。

*****

「先輩、私、実は先輩とキャプテンがキスしてるのを見たんですよ」

 ビールも二杯目に入ると、話題はお互いの恋愛事情に必然的に変わる。朱里は当時の話を拓馬に聞いてみた。

「覗いてたの?」

「違いますよ。廊下で濃厚なキスをされてたのでびっくりしたというか」

「へー、そんな時代もあったよね」

 拓馬の反応は意外にも薄い。

「純情な私にはトラウマというか、なかなかの衝撃でしたよ」

「そうなんだ」

「あんな風に男と女は愛し合うんだ!と当時は思ってました」

「今はどうなの?」

「そうですね、どうでしょうか」

「試してみる?」

 思った通りの軽さだ。ますます学生時代のイメージとかけ離れていくが、朱里にとっては拓馬はオナニーのおかずであればいい。
 
 外見だけがタイプの先輩だから、朱里がはまることもないだろうし、嫌われてもいいからこの際なんでもお願いしてみようと、朱里はビールを飲み干し切り出した。

「先輩、私の願望をかなえてくれますか?」

「願望?まさかSMとか?」

「違います。その…、痴漢ぽくしてもらえないかと思って…」

「どういうこと?具体的に言って」

「言ってもひきませんか?」

「ひかないよ、俺も好奇心旺盛な方だしね」

「わかりました。じゃあ…」

 朱里は、痴漢ごっこがしたくてたまらないと拓馬に訴えた、だから新幹線の車内で隣に座り、寝たふりをするから好き勝手に触ってほしいと切望した。

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