長年諦めきれなかった血の繋がらない妹への想いが爆発した夜 (ページ 2)

「…え?はい?彼女…まだいないの!?」

「まだって…一言余計だな。いないよ」

《信じられないって顔で見てきやがって…ムカつくな》

「プッ!うっそだぁ〜〜!絶対彼女いたことあるでしょ!あのお兄ちゃんが!」

「あのって何だよ」

「顔も良くて選り取りみどりのお兄ちゃんが…えええええっ!まさかその年で童貞とか言わないよね!?」

ーーゴホッ!!

ティッシュを急いでとり口元を拭く健人。

「童貞じゃねーよ。ってかそんなこと堂々と聞くなっての」

「童貞じゃないのに彼女はいたことない…ああああ遊び人…ぎゃー!」

バシバシ椿に叩かれ健人は呆れ返ると共に、危機感を覚えた。

《これ以上寄るな…ヤベェシャンプーの匂いで変な気になる》

「んも〜!早く落ち着きなってお兄ちゃん!」

プツンッ
健人の中で、何かの糸が切れた音がした。

ーーーパシッ

「落ち着けだぁ?…手に入らないから他に向こうとしてるんじゃねえか」

健人がパシパシと胸を叩く椿の手を取って距離を詰めた。

久々に我を出した健人。

《いつもいいお兄ちゃんでいようと気を張ってるのに、コイツはこっちのこといつも揺さぶってきやがって…》

至近距離で見つめ合い、高校のあの時を思い出させる健人の真剣な顔に、椿は動揺する。

「手に、入らない?え?どうしたのお兄ちゃん?」

困惑の隠せないその瞳に、健人のイラつきも加虐心も加速する。

「そのお兄ちゃんての、やめろ」

「え…」

「俺はお前のこと、妹だなんて思ってない」

《こんなに近くでコイツ見たのなんて初めてだな。ヤバイ止まれ俺》

自らを律しようにも、動き出した距離には敵わなかった。

健人は腰にも手を回し椿を抱き寄せた。

「…手に入れたくても入らないの、誰のことかまだ分かんないのか?」

今の関係なんてぶち壊せ、やめろと拮抗していたはずの健人の心の内はもう前者に傾いていた。

椿は困惑したまま口を開くこともできなかった。

揺れた瞳だけが健人と合ったまま、椿にはそこからはスローモーションに見えた。

眉間に皺を寄せた、前に一度だけ見た表情の健人が顔を寄せ、気づいた時には唇に柔らかいものが触れていた。

固まる椿をよそに、その柔らかい唇に、自分たちを包むシャンプーの香りに健人は酔いしれていた。

《ずっと欲しかったものに触れられた。…もう止まれねぇ。許せ椿》

何度も角度を変えて、満足気に甘いキスを続ける健人。

「誰のことか、もう分かったよな?」

「お兄「椿、もうそう呼ぶのやめてくれ。名前にして」

押し黙ってしまった椿。

困惑しているのは分かっていても、健人は抱き寄せたまま離してやれない。

「俺は、物心つくときには椿、もうお前に惚れてたんだよ」

《もっと、困らせたい》

健人は、椿の甘い唇の虜になって何度も貪る。

激情を隠さなくなった健人に、心地よすぎるその唇に椿は動揺したまま。

コメント (0)

コメントを書く