仕事の慰安旅行で行った先には元アイドルがいて、彼がいると知らずに露天風呂に入った私は

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私の勤める会社は小さいので、大企業のような保養所はないが、社員同士のコミュニケーションとして、BBQをしたり、旅行に行ったり、結構する。今時珍しいと思うが、先代の社長、つまり今の会長が考案したのでやめるにやめられない状態なのだという。

 どうせなら自由に旅行するための休みが欲しい。何故、いつも会社で顔を合わせる人たちと休みの日にまで会わなければならないのか。

 今年も旅行のお知らせが回ってきた。この間は福岡へ旅行だったが、今年は?

 宿泊地は大分の温泉地とある。私は温泉が好きなので複雑な気持ちになった。

 温泉は好きだが、そんなに親しくないのにずっと一緒にいる会社の人たちに肌を見せるのは抵抗がある。それなら個人で行きたかった。

 しかし、こんな小さな会社でイベントを断ると、今後のことに関わる。半強制イベントに私はため息をついた。

 大分の温泉旅館は何とも言えない雰囲気だった。おそらくバブルの頃に建てられたものであろう外観は赤く塗装されていたのだろうが、今ではすっかり色褪せている。

 いや、少しボロい方がここら辺の雰囲気にあっているかもしれない。だって、この温泉旅館以外に何もなかったから。

 旅行の主催に温泉街ではなかったか確認したら、検索したらここの湯がいいと言う。

 これではずっと風呂に入っていないと時間を過ごせない。いくら温泉好きの私でも物凄くがっかりした。

 中に入ると、玄関は思っていたよりも解放感があって好感が持てた。意外とこの旅館が好きかもしれない。

 荷物を中居さんが運んでくださり、私はフリーになった。温泉好きの性か、どんなお風呂だろうと風呂場を覗きに行ってしまう。

 そのとき、男の人とぶつかった。

「すみません」

 顔を上げると、そこには先日、引退したアイドルの理人がいた。びっくりして、思わず声を出しそうになったけど、理人は落ち着いた声で、

「こちらこそすみません」

 謝って、どこかへ行ってしまった。

 理人は私より年下なのに、結婚をしていて、それがバレて引退まで追いやられたとネットで見た。でも、ネットの噂レベルなのでどこまで信じていいか分からない。

 私は理人のことは忘れて、風呂場を改めて見に行った。

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