忘れられなかった元彼と再会して、必死に閉じていた蓋が開けられる夜 (ページ 2)

翔、相変わらずかっこよかったな…
忘れられない、か。
正直言うと、私も翔の事は頭の片隅にずっといた。

四六時中頭の中に翔がいるとかではないし、これを忘れられない、と言うのかは分からないけど…

懐かしみと、翔の嘆きを聞いて複雑な気持ちになってカラオケを出てしまった。
ここから近いネカフェを検索して歩き出していると…

「おいっ!小春!ちょっと待って!っはぁ」

…振り返らないでも分かってしまう。
あまり振り向きたくない。

「…翔?どうしたの?」

「これ、俺らの連絡先。旅行であと3日はここら辺にいるんだ。今も困ってんだろ?誰にでもいいから、連絡してくれ」

そう言って、皆の電話番号が書かれた紙を手渡された。

「わかった、後から登録して皆に連絡するね、わざわざ走ってきてくれてありがとう」

「ネカフェ、見つかったのか?」

ううんと答えると、翔は私の横に来た。
「こんな遅くに一人で歩くなよ。泊まるとこ見つかるまでは送らせろ」

気まずくて皆のところを出てきたくせに、わたしはわざと歩むペースを遅らせてしまった。
翔は何気なくペースを合わせてくれた。

「なあ、小春今A社で働いてるって言ってたよな?」

「え?うん、そうだけど…」
「来春からよろしくな。俺、S社勤務だから」

「ええっ!?そこ取引先!」
「そう。俺今いるのはS社の地方支社でさ。来春からは人事異動で本社勤務になったんだよ」

昔から要領がよかった翔。
元からモテてたけど、東京に来たらもっとモテるんだろうな…

心に暗雲がたちこめる。
って、何をモヤモヤしてるんだか私は…

案外早くネカフェが見つかって、その日はお礼を言って翔と別れた。

*****

「まさか…新しい担当が翔になるなんてね」
「だよな。担当交代の引き継ぎと挨拶のためにA社行って、速攻お前に会うなんて思ってなかったよ」

あれから早数ヶ月。
私たちは、前任の担当者も交えて飲みに行こうとなって…今はその帰り。

翔が取引先に異動してくるのは聞いてたけど、まさか担当になるなんてどこの物語よ…
話しながら歩いていると、翔が立ち止まった。

「なぁ、小春…お前今は彼氏…いるのか?」

「何よいきなり…」
「いいから、聞かせてくれよ」

少しの間沈黙が流れる。

「…いないよ。あの後ちゃんと別れられたから」

「俺と…付き合ってくれないか?」

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