アトリエに棲むミステリアスな義兄と秘密を共有する夏休み。甘味より甘い時間…

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アトリエに棲むミステリアスな義兄と秘密を共有する夏休み。甘味より甘い時間… (ページ 1)

ミーンミーン…

私は氷菓子を手に古ぼけたアパートの前に立って二階を見上げた

ここは私の義兄で芸術家の紳一さんが棲むアパート。

部屋の窓が開いていたから紳一さんがいることはすぐにわかった。

階段を昇り、部屋の前でドアをノックする。

間もなくしてドアを開くと、優しい笑顔で儚い雰囲気を纏った大人の男性が現れる。

「こんにちは、紳一さん。今日も暑いですね、差し入れに氷菓子を持ってきました」

「手毬さん。わざわざありがとうございます。あがってください」

*****

紳一さんのアパートは木造で古風な作り。そこには、彼だけの世界が広がっていた。

そう、彼は芸術家なのだ。あまり人に知られない、ただ静かな芸術家。

私の夫の家族から大反対されて、自分でアパートを借りてここに棲んでいる。

「氷菓子、冷凍庫に入れておきますね」

そして、ここからは夫も知らない私と義兄である紳一さんの秘密の関係…

私は来ていた洋服を全部脱ぎ捨て、アトリエの椅子に座る。

そこに羞恥心なんてものはなかった。

(私は紳一さんが売れるために力を貸しているだけ)

私を見て、ペンや筆を走らせる紳一さんは真剣な表情を見せてくれた。私だけを見てくれた。

(この時間だけ、この人は私だけのものだから…とっても何よりも幸せなの。許してね、あなた)

「手毬さん。絵の具の整理をするから休憩にしていいよ」

「はい、わかりました」

(私の幸せな時間。生きていて何よりも息がしやすい時間…)

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