厳しい家庭環境で育ったお嬢様が風俗店で働いてみるとまさかの再会の客が来て…!?

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厳しい家庭環境で育ったお嬢様が風俗店で働いてみるとまさかの再会の客が来て…!? (ページ 1)

 私の家庭はとても厳しい。まるで犬みたいに、私は躾(しつけ)されて育った。
 だから私は風俗店で働いている。反骨精神みたいなものだ。きっとお母さんが知ったら泡を吹いて倒れると思う。でも私の人生なんだから、私の好きにさせてほしい。

 幸い、というのか、私は女の子のことを好きになる性質だ。女子校しか通ったことがないのと、両親が選んだ男の人としかお付き合いもしたことがないのが、私のこの性質の要因だと思う。もしこのお店で働いていな ければ、私は一生でたった数人しか男性と関わることはなかったんじゃないかな。

 だから、今日も私は指定されたラブホテルへ向かった。

 でも、今日はイレギュラーな日だった。いま目の前のベッドに腰かけているお客さん……男の人は、こんな私の数少ない男性関係のなかでも例外の人だったのだ。

「お前、山之内か? 意外だな、今こんな店で働いてたのか。てか、なんか、その……気まずいな。すまん」
「山崎くん……。ええと、久しぶりだね。謝らないでいいよ。ま、前の店よりお給料がいいからね。あと、いろんなことを経験してみたいなあって思って。でも、なるべく私がここにいることは内緒にしてほしいな……」

 山崎くんとは、前に本屋さんでバイトを経験した時によくシフトが被っていた。同い年で、話しやすくて、私の数少ない男友達ともいえる人だ。でも、まさかこんなところで再会しちゃうなんて。

「ああ、もちろん内緒にしておく。むしろ言ったところで誰も信じてくれなさそうだけどな」

 彼は大型犬のように明るくそう言った。

「ありがとう。あの、別の子に変更しようか? 私が相手じゃ、その……やりにくいでしょう? 私から言えばたぶんオーナーも聞いてくれるはずだけど」
「あ、いや、いいよ。いいよっていうのも変だけど」
「えっと、じゃあ、お喋りする……? あとでお金は返すから」
「いいよいいよ、料金はちゃんと取っといて」

 「でも……」と私が言うのと、彼が言葉を続けるのが同時になってしまった。

「こんなところで言うのもなんだけど、俺、山之内のことが好きだったんだ。もちろん見た目だけじゃない。周りに気づかいできるところとか、丁寧に作業するところとか、そういうところに惹かれた」

 私は顔が熱くなるのがわかった。体を重ねるときとは違う頬の紅潮と、心臓が早鐘をついた。

「今度また、お店の外で個人的に会ってくれないかな」
「えっと、あの……。ご、ごめんなさい」

 嬉しかったのは事実だ。でも、私は女の子が好きなはずだし、なによりこんなドキドキすることは初めてで、よくわからなくて。
 彼の顔をチラ、と見上げると、耳を下げた犬のようにシュンとしていた。

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