「流石にもう、隠せないんだけど」頻繁にノートを借りにくる彼の悪いところ (ページ 2)

「お前って鈍感だよな、本当に」

「何?」

「普通、ノート借りるだけの為にわざわざ家まで来ないって」

だんだん俯きながら啓介が口にした言葉を測りかねて、私は短い言葉で意味を促した。

結局帰ってきたのも遠回しな言葉だったけれど、もう何と言われなくても意味は分かる。

啓介が頬を染めた姿を見るのは、これがはじめてだ。

「バレてると思ってたんだけどな」

「わ、分かるわけないじゃない!」

自嘲気味に口元を歪めた彼の言葉に、思わず取り乱してしまった私。

ちらりとこちらを見つめた啓介の瞳はどうしようもなく熱く、彼が本気だと証明していた。

「それで?」

「え、」

「流石にもう、隠せないんだけど」

突然のことで回りきっていない頭の中がぐるぐるとせわしない。

動揺でかたまった私の腕を、啓介の手がぐっと掴んだ。

「嫌なら、やめるから」

息がかかるほどの距離でそう囁いた啓介に、どう返事をしていいのか分からない。

沈黙を肯定と捉えたのか、長い睫毛を伏せた啓介がそっと顔を寄せた。

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