意地悪で冷たい欲望しか感じられなくとも自ら囚われる快楽の練習 (ページ 3)

ゆっくりと仰向けに座る先生にまたがった後、震える手で目の前の頬に手を添えた。

そして、触れるだけのキスをする。

そんな小学生がするようなキスを数回繰り返し、その後に自分の舌を少しだけ先生の唇の中へと挿入させる。

この瞬間が…いつも苦手。

「んんっ!」

私が舌で触れた事を合図とするように、先生は私の頭に手をやり、より深いキスを始める。

さっきまで考えていた事を全て消し去るぐらいの、熱くて、そしていやらしいキス。

「ふっ!はぁ…んっ!」

患者さんは勿論、他のスタッフが帰った後の静かな診療室に、クチュクチュと鳴る唾液が絡まる音と、私の卑猥な声だけが大きく響く。

やっとキスから開放された時には、私の悩みなんてこれっぽっちも頭の中には残っていない。

乱れる息を吐きながら、次の快感を期待し、両手を先生の首の後ろにまわした。

「せ、先生。」

「梨香…何度言ったら分かるんだ?」

「え!?っあ!」

突然、グッと先生の大きな手が私のお尻を鷲掴みにした。

そんな乱暴なその行為でさえ、自分の体が喜び、快感に震えるのが分かる。

言葉の意味を理解した私は、少し涙の滲む目で先生を見つめた。

「ご、ごめんなさい。…清二さん。」

二人っきりのこの時間。

先生は、自分の事をけして「先生」とは呼ばせない。

理由は分からないけれど、その名前を口に出来るのは、きっと私と…奥様だけ。

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