既婚者と不倫関係にあるけれど、いつ終わるかわからない幸せを感じたい

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既婚者と不倫関係にあるけれど、いつ終わるかわからない幸せを感じたい (ページ 1)

本当に欲しいものは、どうしても手に入らないのかもしれない。
それでも手に入れようと足掻くのなら、地獄に落ちる覚悟が必要なのだろう。

「やあ、美沙ちゃん」
「晃司さん…」

11月。年の瀬が近づいてきて、それとなく慌ただしくなり始める時期。
肌を撫でる風が冷たいけど、私の体温はとても高い。
待ち合わせ場所に現れた私の待ち人、晃司さんはそっと私の手を握ってくれた。

「ごめんね、待たせちゃったかな」
「いいえ、大丈夫です。それに、晃司さんと会えるならいくらでも待ちます」
「あははっ、そう言われるとなんだか嬉しくなっちゃうな」

なんでもないように会話をしながら、私たちは街を歩く。
既婚者である晃司さんと、その不倫相手である私が、本当のカップルのように。

「今日は終電間に合いそうにないって言ってあるから、泊まれるけど…どうする?」
「えっ、そうなんですか! どうしよう、部屋片づけてないですよ…」
「そんなの気にしないし、大丈夫。だってさ…」

するり、と晃司さんの指先が私の指を撫でる。
冷えた指先を温めるためではなくて、ねっとりと擦り込んでくるような、いやらしい撫で方。

「どうせ脱ぎ散らかすでしょ?」

そっと顔を寄せて、晃司さんが囁く。
その問いかけには答えられず、私はマフラーに顔をうずめた。
私の様子をからかうように、晃司さんは「ははっ」と軽快に笑う。

「いつまでも初心な反応しちゃってさ、可愛いね」
「晃司さんがそういうこと言うから…」
「ごめんごめん。なんか美沙ちゃんには、そういうことを言いたくなるんだよね」

心臓がうるさいくらいに高鳴る。余計にこの人から離れたくなくなる。
少し強めに手を握ると、晃司さんも握り返してくれた。

「…もう、脱ぎ散らかしちゃう?」

晃司さんのその言葉に私は頷いて、さらにマフラーへと深く顔をうずめるのだった。

*****

就職のために田舎から都会へとやってきた私が初めて入ったお店は、晃司さんの経営するセレクトショップだった。

店頭に並ぶ服や雑貨に惹かれて入ると晃司さんが優しく出迎えてくれて、都会の人は冷たいという偏見を持っていた私はとても驚いたのを覚えている。
晃司さんはとても気さくで優しくて、お客さんとショップの店長という関係だった時から話をよく聞いてくれた。

話していくうちに地元が一緒だということもわかり、それから話はよく弾んだ。
私が晃司さんを好きになるのは、あまり時間がかからなかった。
勢いあまって気持ちを伝えてしまった時、晃司さんはそんな気はしていた、と困ったように笑っていた。

でも、晃司さんは断らなかった。断ってくれなかった。

「いつまで続けられるかわからないけど、俺たちだけの秘密にしよう」

そうして私たちは、今の爛れた関係を続けている。

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