可愛いと思っていた会社の後輩男子。なのに酔ったら肉食男子になってしまって…!?

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可愛いと思っていた会社の後輩男子。なのに酔ったら肉食男子になってしまって…!? (ページ 1)

「も~…。こんなになるまで飲んじゃ駄目でしょ~…」

ゆっくりと揺れるタクシーの中、私は肩にもたれかかってくる大きな体に、溜息を吐いた。
でもつついても、押し返しても、その大きな体は起きることなくむにゃむにゃと不明瞭な言葉を吐き出している。

顔だけ見ればイケメンだし、体だって筋肉質で恰好いいのに、手のかかる子供みたいだ。

「寝てるの? はー…。家に着いたらちゃんと起きてよね」

溜息を何度も吐きつつ、私はネオンの光る窓の外へと視線を移した。

今日は金曜日。
休日の前で気持ちの緩んでいる金曜日に、後輩の大和くんに飲みに行こうと誘われたのだ。
そこで普通に仕事の愚痴でも話すのかと思ったら、今日は珍しく恋バナが始まった。

『実は俺…ずっと好きな人がいるんです!』
『え、そうなの?』
『はい。年上で綺麗で優しい人なんですけど…俺、全然相手にしてもらえなくって』

お酒をたくさん飲みながら、一人で落ち込む大和くん。
ビールを何杯も何杯も飲みながら訴えてくる。

『俺って男に見えませんか? やっぱり年下って恋愛対象にならないんですかね?』
『いや、その人じゃないから分からないっていうか…』
『先輩の意見が知りたいんです!』

そして、ビールを煽り続けた彼は…こうして私よりもずっと早く、潰れてしまったのだった。
お酒に強いと思っていた大和くんだけど、恋愛に行き詰まっているのが相当応えているのか、随分と早く潰れてしまった。
落ち込んでいた様子もあるし、少し心配だ。

「年上の人、ねぇ…」

誰なんだろう。
可愛いと思っていた後輩が、知らないところで年上の人に恋をしていた。
なんだかそれが面白くなくて、私は彼の方をちらりと見た。

「恋人かぁ…いいなぁ」

私はもう何年恋人がいないのか、分からないくらい。
仕事は楽しいしやりがいがある。
けど、すっかり遠のいてしまった恋愛を楽しんでいる彼を、少し羨ましく思った。

なんだか消化しきれない思いを抱えたままタクシーに揺られていると、どうやら目的地に着いたようだった。
駅からそれほど遠くない静かなマンションの前に、ゆっくりとタクシーが止まる。

「大和くん、着いたよ」
「うー…」
「降りて。歩ける?」

大和くんは目を擦りながら起きると、さっとスマホを取り出してお会計を済ませてしまう。
ちょっと酔いがさめてきたのかな?
だったら、部屋に入るところを見届けたらすぐに帰ろう。 

タクシーの運転手さんに待っていてもらおう、と思ったけど、それよりも早く大和くんが私の手を握って引っ張りだした。
急に繋がれた手に、心臓がどきりと高鳴る。
いや、彼は誰かと間違えているのかもしれないし、と心をなだめる。
手を振りほどこうとするけど、意外に力が強くて引っ張られたままになってしまった。

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