海外赴任が決まった先輩と心に残る思い出セックス (ページ 5)

 もう、何も考えられない。頭の中は真っ白だ。

 わかるのは、この悦び。

 自分のなかに、彼がいる。その感覚だけ。

 晴香は和臣の背中にすがりついた。高く持ち上げられた脚が、激しい律動に合わせてがくがくと揺れる。

「好きだ。きみが……ずっと、好きだった――!」

「わ、私も……、わたしも、好き……っ!」

 彼の欲望が、身体の奥底ではじけた瞬間。

 晴香も生まれて初めて体験するような、激しい絶頂にのぼりつめた。

「やっぱり、来なければよかった……」

 ベッドの上にのろのろと体を起こしながら、晴香は独り言のようにつぶやいた。

「もうすぐいなくなっちゃうってわかってるのに、こんな……」

 今夜のことが、大事な思い出になればいいと思っていた。けれど実際に彼に抱かれてみると、思い出なんかじゃ足りない、もっと一緒にいたい、とそればかり思ってしまう。

 一度抱かれただけに、彼がそばにいないことがさらにつらく思えるだろう。耐えられるかどうか、自分でもわからないくらいに。

「すまなかった」

 和臣が後ろからそっと抱きしめてくる。

 晴香の髪にくちづけ、ささやく。

「俺も同じだ」

「え……」

「日本を離れる前に、自分の気持ちをきみに伝えようと思った。ふられるにせよ、受け入れてもらえるにせよ、それで自分の中で整理がつくはずだ、と。でも、そんなはずはないよな」

 触れてしまったら、互いの気持ちを知ってしまったら。

 なおさら、離れられるはずはない。

「一緒にきてくれないか。俺と、ニューヨークへ」

-FIN-

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