横暴な客に捕まり乱暴な扱いを受けていたら…リセットされる嫌な記憶 (ページ 4)

「当店ではそのようなことがないよう教育を徹底しております」

毅然とした態度に、男性がひるむのが分かる。

「それよりも、このケガについて責任を取って頂けますか?」

利人さんの温かい手がわたしの手を取り、男性二人に見せた。

くっきりと赤い痕が残っている。

「立派な傷害罪ですよ」

男性は青白い顔で、茶髪の男性をチラチラと見やった。

「すみません。こいつ、ちょっと飲み過ぎたみたいで。俺が言っておくんで、許してもらえます?」

茶髪の方の男性がヘラヘラと笑う。

軽い笑顔を見た利人さんの目が一瞬、鋭くなったけれど、すぐにいつもの柔らかい目に戻った。

「分かりました。今回はお酒のせいということで。ただ、お酌が必要な際は、当店のご利用はご遠慮ください」

「はいはい。じゃ、お会計して」

「かしこまりました」

結局、その後の対応は利人さんがやってくれた。

わたしはそのままテーブルを片付け、閉店の準備に入った。

「あの、利人さん、さっきはありがとうございました」

やっと片付けが終わり、店に残ったのはわたしと利人さんだけだ。

嫌なことが起こったとは思えない、片付いた半個室。

最終チェックをする横顔にお礼を言ったら、利人さんは首を振った。

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