ヤケになって入店したバーが、いじわるで不器用な運命を繋いでくれた

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ヤケになって入店したバーが、いじわるで不器用な運命を繋いでくれた (ページ 1)

アプローチしていた同僚に無惨に振られ、慰めてくれるような友人はみんな残業中。ひとりで家に帰るのも嫌で、適当に降りた駅の、適当に見つけたバーに入った。

ここまでは、あり得る日常、として処理できるだろう。さすがに振られたことは心にグサリときていて、あり得る日常として処理したくないけども。

問題はその後だった。

そこしか空いていなかったカウンターの端の席でひとりで飲んでいたら、私はつい涙が抑えきれなくなった。トイレにそそくさと逃げはしたのだけど、レストルームの扉の中に入るとき、カウンターの奥にいたバーテンダーが一緒に中に入ってきたのだ。

私はもちろん「は?」と声に出してしまった。しかし目の前に立つ同い年くらいの男はこういった。

「以前いらしたときから、あなたのことが気になっていたんです」

私はその言葉で、この店に以前一度だけ同僚の彼と来たことを思い出した。
適当に選んだと思っていたのに、私はずいぶんと未練がましいらしい。

「あなたに泣かれると、俺も心が苦しい」

目の前の男はそう続けた。

私は自暴自棄になっていた。そう、このドラマみたいな流れにのったのだ。

近づいてきた彼の顔を避けることなく、私は酒に濡れた唇を合わせた。レストルームの奥、ひとつしかないトイレの個室に、どちらともいえず私たちはなだれ込むように入り、鍵をかけた。
彼は鍵をかけた直後、一番に名前を尋ねた。私はとっさに作った偽物の名前を名乗った。彼が「涼太です」と微笑みながら自己紹介すると私は罪悪感を少し覚えた。

狭いところに、大の大人が2人。なんだか孤独を埋められた気が少しした。

「シてもいいんですか? この狭い、誰が来るかもわからないところで」

彼はそう囁いた。

「あなたが誘ったんでしょう」
「……でも、嬉しいです。拒絶されると覚悟していましたから」

私は会話のキャッチボールを投げ返せなかった。

「すみません。……俺はあなたに興味があるんです。俺にあなたのことを教えてください」

私に興味を持っている。いつぶりだろう、私のことをそんなふうに思ってくれる人は。

そして私はひとときの孤独を埋めるために、彼に身を委ねた。

まるで量産的なドラマみたいなシチュエーションだ。
もしかして、夢を見ているのかもしれないとも思った。
でも、たとえ酔っていて、頭のなかがふわふわしていても、胸をつつむ温かくて大きな手や、お腹の内側をグリグリと撫でる熱い性器が、これは現実だと知らしめた。

「ミユキさん、かわいい……俺のこと、こんなに締め付けて……」

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