セクハラ患者から助けてくれた外科医にお礼をしにいったら…当直室で結ばれる恋 (ページ 5)

「だ、だめです…」

「イヤ?」

イヤな訳がない。

でも、そう答えることが出来ない。

「だって、ここ、病院…」

「病院である前に、ここはベッドのある部屋で、俺と恵は二人きり」

クスリと笑う声にゾクリとした。

上手な言葉が出てこない…期待しているのに。

拒むことも出来ない…ずっとこうしていたいって思うから。

「気付いてなかった?今日だけじゃなくて、ずーっと前から俺が恵を見てたこと」

でも、その言葉に、ここが職場だとか、いつ誰がやってくるかとか、そうした躊躇いの気持ちは消えてしまった。

気付けば、私も先生の背中に腕を回していた。

ゴム手袋を付けたり、カルテをめくったり書き込んだり、患者さんに接する……そんな手が今、私の髪を撫でている。

それが信じられなくて、夢なら覚めないでほしいと思った。

「恵、顔見せて」

「はい…」

顔を上げると、嬉しそうに微笑んだ先生の顔が近付く。

今度は耳元じゃない。

思わず目を瞑った。

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