好きなのに、向き合えなかったあの人とバスの中で再会して… (ページ 4)

「…。」

「…。」

気まずい沈黙が流れる。

「次は◯◯。お降りの方は、お近くのブザーでお知らせ下さい。」

助かった。次で降りる駅だ。

すがるような思いで、左のブザーに手を伸ばす。

「あ…。」

「えっ。」

「それ、その時計。」

嘘…。

滝内さんが、手首を掴んだ。

「いや、これは、その…。」

「ずっと気になってた。誰からだろうって。」

終わった。

ずっと大切にしてたものが、終わった。

絶対、嫌われる。気持ち悪がられる。

「ごめんなさい!」

「どうして、あやまるの?」

「だって…だって、気持ち悪いでしょ。こんなの…。」

「そんなことないよ。」

「…。」

「亜紀ちゃんからだったら、良いなって思ってた。」

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