つまらない授業をサボってただけなのになんでこんなことに… (ページ 2)

「アンタじゃない……桐生だ」

「はぁ?どうでもいいし」

……桐生っていうんだ。

何歳なんだろう…

若そうに見えるけど言うことオヤジだし。

眼鏡かけてるし…つーか眼鏡かけてる奴はだいたい頭いいから苦手だし…

「てか…早く捕まえれば?」

「そうだな…言うこと聞かない悪い子は…」

「?」

「お仕置きってのが昔からの決まりだ」

「え…」

なに言って…

「っ?!」

真面目な眼鏡が急に近づいてきたかと思うと、強い力でいきなり肩を掴まれて、背後にある鉄の柵に体ごと乱暴に押し付けられた。

「いっ…たぁ、なっ…なにすんの?!」

「何って…言っただろ?お仕置きって」

「は?冗談……うそ…ゃっ、離して!」

「痛って…」

抵抗しようと伸ばした手が桐生の目にあたって眼鏡を弾き飛ばしてしまった。

「ご…ごめん」

それだけじゃなかった。

頬にはくっきりと私の爪痕がついていて、そこから痛そうに血も滲んでいる。

「ほっ…本当にごめんなさ…」

「…公務執行妨害」

「え…」

「及び傷害の現行犯」

「なっ…?!」

いかにもという冷静な言葉に今さら怖気付く。

鋭い視線が金縛りのように私を捕らえると、次の瞬間、桐生が私の両腕を素早く掴んで頭上で一纏めにした。

「ゃっ…やだっ!」

「黙れ」

一変する表情…

凄みのある声…

到底太刀打ち出来ない大人の力…

余裕な笑みまで浮かべてくる桐生が途端に怖くなった。

「言うことを聞んだ」

「こっ…こんなことしていいと思ってんの?!」

「何言ってる、これは正当な補導で立派な指導だ」

「…っ!」

眼鏡の奥に隠されていた深い色の瞳が私を射抜く。

まっすぐに向けられた男の視線に不覚にも心臓が跳ねた。

「さて…やんちゃな野良猫をどうやって飼い慣らそうか」

「っ、ゃ…んぅっ」

ニヤリと笑う桐生の唇からゆっくりと舌が伸びてきて、私のリップラインを一周する。

「んんっ…」

何かの冗談かと思った…

「どうした?急に大人しくなって」

真面目で堅物なお巡りだと思っていたのに…

眼鏡を外してはじめてわかる端正な顔と、私をジッと見つめる視線に思わず赤面して目を逸らしてしまう。

そんな私に桐生は愉しげに笑う。

同時に首筋に経験したことのない生暖かい生き物のような感触が這った。

「っゃ、ぁっ…やめ…て…」

「やめない…」

泣きそうになる私に、桐生は取り出した手錠をわざと目の前で垂らして見せつけた。

「嘘…だよね…」

「嘘かどうか、試してみるか?」

不安を煽るようにして、桐生はそれを頭の上にある私の両手首にはめると、すかさず今度は柵と繋げて自由を奪おうとする。

「やっ…こんなの嫌っ、外して!」

必死に抵抗しようとガシャガシャと音を立てて力一杯動いても手首はびくともしなかった。

「外して欲しけりゃ…ちゃんとお巡りさんの言うことを聞くんだな」

「ひゃぁっ…ん…」

首筋を這っていた舌が、頬と耳の間をねっとりと舐め上げてくる。

「っ…あぁ…」

不本意にかきたてられていく熱と、胸の奥に感じるほのかな焦れにどうしていいのかわからなくなる。

こんなはずじゃ…

そう思えば思うほど身体は桐生の舌に反応した。

「そういや…名前聞いてなかったな」

「ん…今さらっ…」

「名前は?」

耳元で囁かれるやたらと色っぽい声色に全身が甘く痺れた。

その声にあてられるようにして名前を零す。

「…美優」

「美優…もう逃がさないからな、観念しろ」

「ふぁっ…」

低く響く声で名前を呼ばれて…

耳に触れそうで触れない唇にドキドキして…

本当にどうにかなりそうだった。

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