十年間何もなかった同期と、突然一夜を共にすることに。羞恥心で悶え苦しむ私。
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十年間何もなかった同期と、突然一夜を共にすることに。羞恥心で悶え苦しむ私。 (ページ 1)
和弘と奈央子は大卒入社組の同期だ。電子機器メーカー勤務だが仕事は激務で、七人いた新卒メンバーも、十年たった今は三人しか残っていない。
奈央子は人事部で新人育成をまかされ、和弘は営業部主任として出張ばかり、もう一人は企画部でお局に泣かされている。
昔は三人で頻繁に飲みに行っていたが、ここ数年は独身の奈央子と和弘の二人でお酒を飲むことが多い。
そんな十年来の同期なので、友達というか、戦友というか、男女の関係にはなるはずのない居心地のいい距離をずっと保っていた。
ところが、二人はついに一線を越えてしまった。きっかけなんて大げさなものはなく、ただ人肌恋しい雨の夜に大人の男女が発情してしまっただけなのだ。
*****
それは、朝から雨がひどかった金曜日。そろそろ帰ろうと準備をしている奈央子に、品川で一人で飲んでいると和弘からメッセージが届く。
奈央子も一人で食事をする気分でもなかったので、奢ってもらおうと軽い気持ちで合流した。
「また出張だったの?」
「うん、広島帰り。奈央子は残業逃れられたの?」
「うん、でも疲れた!」
いつも通りビールで乾杯をし、いつも通り昔話をつまみにする。真面目に仕事の話をしながらも、二時間もたてばいい気分に出来上がり、プライベートの話で盛り上がる。
「そういやお局と戦う私たちのもう一人の同期、二人目ができたんだよね?」
「あいつ、キャバクラにハマってなかった?」
「奥さんともやることはやってんのよ」
「羨ましいのか?」
「そうじゃないけどさ、女は簡単にそういう相手は見つけられないじゃん」
「セフレ欲しいの?お前、欲求不満なの?」
「ほっといて、もう何年一人だと思ってんの」
「もう四年ぐらいじゃない?」
「やばいよね私。女ざかりなのにさ」
「俺も長いことやってないしな」
「そうだよ。あんたも二年は彼女いないじゃん!」
昔から、お互いの下半身事情は何となく知っていた。お互いに特別タイプでもなかったし、同期というだけで恋愛対象にはならなかった。
だから余計になんでも話せる気楽な存在でもある。十年間ずっと助け合ってきた関係は、その辺のカップルよりも阿吽の呼吸が成立しているように思う。
「奈央子はS?M?どっちなの?」
「どっちでもない。和弘は?」
「うーん、多分俺はSだと思う。攻めるの好きだしね」
「なんか意外なんだけど」
「なんでだよ!」
「なんとなくね」
「お前さ、このまま四十代に突入すると思う?」
「ちょっと!やめてよ。このまま女が終わりそうな予感がするじゃん」
「とりあえず、俺としてみる?」
「え?」
奈央子は思わず和弘を見た。その表情は冗談ではないと言っている。奈央子も、なぜか冗談だと誤魔化すことが出来ない。
こんなほろ酔いの体で抱かれたら、燃え上がるに決まっているだろう。奈央子の体温が上がった。
誰かとセックスがしたい。でも、誰でもいいわけではない。
今さら和弘と関係をもってしまってもいいのだろうか。
何も考えず勢いで男と関係を持っても、若気の至りで済まされる年齢に戻りたいと思った。
そんな奈央子の戸惑いが、和弘には伝わっていた。
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