会社の警備員の男の子。やさしい笑顔と引き締まった体がわたしの庇護欲を刺激する！

「おはようございます！」

「お疲れさまでした！」

いつも会社の入口で、元気な声をかけてくれる警備員さん。

やる気のない朝も、仕事で失敗してへこんでいる帰り道も、紗希はその声を聞くと明るい気持ちになれるのだった。

鋭い目つきで警戒をしているはずなのに、紗希に挨拶するときはふっとやさしい表情になることに、紗希は気付いていた。

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ある日、紗希が帰宅するために会社を出ようとしたところ、突然大雨が降ってきた。

会社の軒下で途方に暮れていると、いつもの警備員さんが話しかけてきてくれた。

「雨、急に降ってきましたね」

「そうなんです。今日に限って折りたたみ傘持ってなくて。すぐやみますかね？」

「うーん、空暗いですよね。あ、僕今日早番なんで、もうすぐ退勤します。事務所に傘あるんで駅まで入っていきませんか？着替えてくるので、ビルの裏口で待っていてください」

そう言うと警備員さんは、キチっと一礼をして、警備員事務所に小走りで入っていった。

紗希は突然の申し出にあっけにとられながら、断る隙もなく彼がいなくなってしまったので、ビルの裏口へと回り、待つことにした。

「お待たせしました！紗希さん！」

「え？？なんでわたしの名前？」

「あはは、それ、ネームプレート、いつも下げたままなんで」

そう言って紗希が首から下げている会社のネームプレートを指差した。

「もう！警備員さん、いじわるなんだから。ところで警備員さん、本当にいいんですか？傘ご一緒しちゃって」

「いいですよ、でもその警備員さんっていうのやめませんか？僕、優斗っていいます」

そう言うと紗希の肩をそっと引き寄せ、傘の中へと誘導した。

急に距離が近くなり、仕事終わりの汗の匂いがふっと漂ってきたけれど、紗希は嫌ではなかった。

むしろ、自分の好きな匂いで驚いていた。

「雨、強くなってきましたね、紗希さん大丈夫ですか？濡れていませんか？」

「はい、大丈夫です。…って、あれ？駅通り過ぎました？」

体を密着させて歩くことに緊張していたからか、優斗の汗の匂いに気を取られていたからか、いつの間にか駅を過ぎて、違う道へと出ていた。

「あ、気付いちゃいました？実は僕、電車通勤じゃないんです。いつもは自転車なんですが。家、もうすぐなんで、紗希さん寄っていきませんか？ほら、足もべたべたに濡れちゃってるし」

肩に添えられていたはずの左手が、気付くと腰に回っていた。

「優斗さん、強引すぎます！でも、ちょっとだけなら…足とか鞄とか拭きたいし…」

紗希は自分でも意外だったが、優斗の誘いをすんなりと受け入れてしまった。