「もっと、エロい音、聴かせて」売れないミュージシャンにかき鳴らされる身体
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「もっと、エロい音、聴かせて」売れないミュージシャンにかき鳴らされる身体 (ページ 1)
カイの甘く掠れた声は私の耳から入って、血液に乗り、やがて心臓に達する。
そして、心臓から、また血液と一緒に全身を巡る。
快感、としか言いようのないものを、私はカイの歌を聴く度に感じた。
だけど、カイの歌はラジオやテレビで流れない。
それがミュージシャンという仕事において、致命的なことだと知ったのは最近だ。
「リコさんはバカだねぇ」
カイが溜息交じりに言った。
ライブ後の打ち上げ会場は、安いだけが取り柄の小さな居酒屋。
幾人かのファンとスタッフが勝手に騒ぐ中、カイはちびちびとウーロンハイを飲んでいる。
「だって、最近はインディーズでも売れてる人、たくさんいるじゃない」
「そりゃ、昔と比べればね。でも、そんなの一握りだから」
苦笑いを浮かべるカイの目元に疲れが滲んだ。
路上ライブから始まり、小さなライブハウスを経て、インディーズ契約に至るまでは、順風満帆だった。
なのに、最近のカイは疲れ切っている。
「俺みたいな半端なやつが、インディーズで売れるほど甘くないんすよ」
「カイは半端じゃないよ。私、カイの歌を聴いたら、いつだって鳥肌が立つもん」
カイの声は特別。
宝石みたいに輝いて、毒みたいに体を痺れさせる。
「そんなこと言ってくれるの、リコさんだけっすよ。本当、リコさんは俺なんかには、もったいないファンだ」
ほとんど泣き出しそうな勢いで、カイが突っ伏した。
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