痴漢から助けてくれたおじさんにキュンとしてイタズラしてたら…

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痴漢から助けてくれたおじさんにキュンとしてイタズラしてたら… (ページ 1)

朝の電車はすごく混んでいて、実はあんまり乗りたくない。

けれども、通学に使っていた自転車が盗まれてしまって、新しい自転車を買う余裕もなく、しかたなく電車を使っている。

「ヤダなぁ……乗りたくない」

思わずマイナスな事を呟いてしまうのは、ラッシュがきつい他にも、嫌な理由があるからだ。

ここ一ヶ月、私はずっと痴漢に悩まされている。

乗る車両を変えても駄目で、時間帯も変えても駄目。

スカートを履いてるから触られちゃうのかな? と思ってデニムやパンツに替えても駄目。

なにをやっても駄目なので、毎朝きつめのスキニーデニムを履いて、おしりを触る手と格闘しながら乗っている。

「……はぁ」

ホームに滑り込んできた電車に、溜息をつきながら私は電車に乗り込んだ。

後ろから大勢の人に押されて、電車内の奥に押しやられた。

するとすぐに、おしりに手の感触。

私はイライラしながらその手を払った。それでも、痴漢はしつこくおしりを撫でる。

(もう! 毎日毎日なんなの!)

揉むようにおしりを撫でる痴漢の手を、私は爪を立てて引っ掻いた。すると突然、ぎゅうっとおしりを力いっぱい抓られた。

驚きと痛さと恐怖で固まる私のおしりを、痴漢は円を描くように撫でまわし、足の付け根に指を伸ばしてきた。

「……やだっ!」

触らないで! 怖い! どうしよう……!

涙が出そうになったその時、「なにしてんの?」と言う男の人の声と共に、痴漢の手が私から離れていった。

声のした方を振り向くと、サラリーマン風のおじさんが、痴漢の手を掴んでいる。

「この人のこと触ってたよね?」

「ちっ違う……誤解だ!」

「俺、見てたよ。ねぇ、君」

ポカンと口を開けていると、おじさんが私に話しかけてきた。

「この人、君の知り合いかな?」

「ち……がいます! この人全然知らない人です! 痴漢です!」

私がそう叫んだら、痴漢が逃げようとした。

その時、「ぎゃあっ!」と悲鳴が上がって、痴漢はいとも簡単に、おじさんにねじ伏せられていた。

電車が次の駅に着いた後、おじさん……片倉さんは、手際よく駅員に痴漢を突き出し、警察にも事情を説明してくれた。

「大丈夫?」

痴漢の被害届を出し終わって、疲れていた私に片倉さんはペットボトルのお茶を差し入れてくれた。

「あ、ありがとうございます。大丈夫です」

「そう。なら、良かった。じゃあ、俺もう行くね」

「あっ! あの、お礼が!」

「そんなのいいよ」

「これから会社なんだ」と、軽く手を振りながら、片倉さんは駅の構内を小走りに去っていった。

私はどういうわけか、その後姿が見えなくなるまで、その場を動けなかった。

日曜日、私は大学の近くに住む友達と遊ぶ約束のため電車を待っていた。

もう痴漢は捕まったし、怯える必要は無い。だから、久しぶりにいっぱいオシャレした。

スカート履くなんて久しぶり。

私は楽しい気持ちで、電車に乗りこんだ。

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