「可愛いだけで終わらせないで」思い出を塗り替えるオトナの再会 (ページ 2)
「菜々子ちゃんも就職したんだろ?母親が電話でよく菜々子ちゃんの近況教えてくれるよ」
「え、そうなの?なんか恥ずかしい…」
思わず俯くと、頭の上にポンと大きな手の感触。
「就職おめでとう。今度何かお祝いするよ」
昔はよくこうして頭を撫でてもらった。
懐かしくて、少し気恥ずかしくて、でもとても恋しかった。
私は彼に、ずっとずっと、片思いしてきたのだ。
「じゃあ、今から一緒にお茶してください」
「え、今から?」
「うん。せっかく久しぶりに会えたから。まだまだ話したいこともあるし。あ、でも、他に予定とかあるなら―――」
「いや、ないよ」
思わぬ即答で返されて、大人びた笑顔にくらくらした。
「でも、ここらへんって何もないだろ?コンビニとかスーパーばっかでさ」
「確かに…」
でも、このまま日をずらせば、話が流れる気がした。
かと言ってわざわざもう一度電車に乗って、どこかへ移動するのも憚られる。
選択肢は一つだった。
「巧さんのうち…」
「え?」
「巧さんのおうち、お邪魔しちゃだめ?」
「うちって…、まさかマンション?」
こくんと頷く。
自分でも大胆なことを言っているのは分かっている。
顔が熱くなって、きっと真っ赤になっているんだろうな、と思った。
「いや、いくら幼馴染みたいなもんだとは言っても、仮にも男の一人暮らしだよ?」
「うん、分かってます」
「分かってないだろ。菜々子ちゃんだってもう子供じゃないんだから…」
そう言う彼が、今までに見たことのないほど慌てていて、なんだか可愛らしかった。
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