森で助けた男の人が実は狼だった!?狼が発情期を迎える満月の夜に、捕まってしまった赤ずきんの私 (ページ 2)
彼は「ヴェール」と名乗った。
ヴェールさんの話によると、あまりにもお腹が空いていたからそこら辺のキノコを食べたら、毒キノコに当たってしまったということらしい。
ヴェールさんのクールな雰囲気とは対照的に、理由がなんだか子どもっぽくて、不覚にも可愛らしいと思ってしまった。
幸いにも、ヴェールさんが口にしてしまった毒キノコが持っている毒は、そこまで重大なものではなかった。方向感覚がおかしくなるのが主な症状で、もし森の奥へと迷い込んでしまえば危なかったが、今回は私が見つけられたので運が良かった。
さっそく薬を処方したから、数時間もすれば症状は完璧に引くはずだ。後遺症も残らない。
私が薬を調合するのに使った道具を片付けている間に、ヴェールさんはいつの間にか眠ってしまっていた。
*****
次にヴェールさんが目を覚ましたのは、すっかり日が沈み切って、夜空に浮かぶ月の形が綺麗に見え始めたころだった。今日は満月だ。
ヴェールさんの様子を見に行くと、彼は寝台の上で体を起こして、窓の外を眺めていた。
「ヴェールさん、具合は大丈夫そうですか?」
…彼の違和感に気づくのが遅れた私は、何の警戒もせず寝台に近づいてしまった。
こちらを振り向いたヴェールさんに腕を掴まれ、ぐい、と引き寄せられる。細身のわりに力が強いヴェールさんの腕で抱き締められてやっと、彼の息が荒くなっていることに気がついた。
「…なあルチア、なんで俺を助けた」
ヴェールさんの頬は赤く上気して、苦しそうに息をしている。
「ヴェールさんが倒れてるのを見つけたから。もし怪我してるなら、助けないとって、思っ、て…」
言葉尻がすぼんでいく。おそるおそるヴェールさんを見上げた私の目が捉えたのは、耳…と、尻尾。
「狼…?」
思わず口をついて出た言葉に、私自身も理解が追いつかなかった。
ヴェールさんの深い緋色の瞳が、暗闇の中で妖しく輝いている。この辺りでは見ない目の色をしていたのも当然だ、彼は狼だったのだから。
「嘘…森の奥まで行かなければ大丈夫、って」
「こんなところまで出てきちまったのは、悪いと思ってる」
ヴェールさんは息を切らしながら絶え絶えに言葉を紡ぎ、私の首元に顔をうずめる。荒い息遣いがそのまま私の肌に触れて、びくりと小さく体が跳ねた。
「…だからって、発情期の狼を家に入れるバカがどこにいる」
「ひゃ…っ」
熱くて柔らかい舌の感触が、鎖骨から首筋、耳裏までを舐め上げる。そのまま耳の内側までもが舌に蹂躙され、いやらしい水音が耳朶に響く。
「っぁ、やだ…っ」
せめてもの抵抗のつもりでヴェールさんの胸を軽く押してみるも、その手をあっさりと絡め取られて、寝台に押し倒されてしまう。
ヴェールさんは仰向けに寝台に縫い付けられた私の上に馬乗りになると、ブラウスのボタンに手を掛けて、乱暴に私を剥いた。たちまち一糸まとわぬ姿にされてしまい、夜の冷たく冴えた外気が肌を滑る。
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