今夜は一度抱かれたはずなのに、身体の熱が引かなくておねだりをしてしまった私

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今夜は一度抱かれたはずなのに、身体の熱が引かなくておねだりをしてしまった私 (ページ 1)

彼氏の凛は、男の人にしては淡白なほうなのだと思う。
自分本位な、身勝手な抱き方はしない。それは恋人という関係である以上当然のことだと思う。

けれど、みんながみんなそういうわけではないことも私はちゃんとわかっている。よく呑みに行く友達が時折、べろんべろんに酔っ払いながら「時々彼氏の強引さがすっごいいやになるときあるんだよね」と愚痴をこぼすからだ。

その点凛は、そこらへんは本当に誠実な人だなあと心の中でしみじみ思う。

でも紳士的というより淡白なような印象を持ってしまうのは、多分、凛のせいじゃない。
凛に比べて私のほうが触れたい、触れてほしい、と求めてしまう気持ちが強いからだ。
だから、どうしても凛が淡白なように感じてしまう。

今だって、そうだ。

私はさりげなくソファに座り直し、太ももをもぞもぞと擦り合わせる。
凛はなんとなく流している深夜のバラエティ番組を眺めていた。私もテレビを眺めているふりをしているけれど、本当は凛の様子を窺ってばかりいる。

ほんの一時間前までは身体を繋げ合っていたのに。
いつもだったら、たっぷりと凛の熱を感じて、甘く満たされるはずなのに。

どうしてだか今夜は身体にこもった熱がいつまでも引かない。

しばらくベッドでまどろんだあと、このまま眠ってしまうのももったいないからと二人でリビングまで起き出して、そうしてゆったりとした夜ふけの時間を過ごしているのに。その贅沢さをうまく味わえない。

――触れてほしい。
どうしてこんなに触れてほしくなってしまうのだろう。

「凛」

何気なく、さりげなく、なんでもないふうを装って名前を呼んだつもりでも、自然と声は上擦ってしまった。
ぼうっとテレビを眺めていた凛はこちらを向いて、不思議そうな顔をした。

「――朝陽?」
「あ、いや、ごめん…何でもないんだけど…えっと、何か飲む?」

自分でもあまりに不自然すぎるごまかし方だと思った。というよりも、まったくごまかせていない。
案の定、凛は戸惑った顔をしている。
けれど戸惑いながらも、不自然に飲み物をすすめる私に「とりあえず大丈夫」とちょっと笑って応えてくれた。その優しさがかえってしみる。

このまま、身体にうずまく熱を無視して朝を迎えるべきか。
――でも。

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