失踪していた従兄弟が帰ってきて、お互いの本当の気持ちに向き合う私たちの決断
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失踪していた従兄弟が帰ってきて、お互いの本当の気持ちに向き合う私たちの決断 (ページ 1)
今年も帰省の時期がきた。帰省する人たちで東京駅は満杯でキャリーケースを引いて移動するにも苦労する。
葉月は夫と子供を連れて、実家のある関西に帰った。冬は夫の家、夏は葉月の家と決めている。
実に1年ぶりとなる我が家は何も変わっていなかった。父と母が娘たちを歓迎する。
家に上がると、そこには従兄弟の英二がいた。
「よう」
軽く手をあげ、挨拶をする英二。葉月はつい怒り出しそうになった。
英二は数年前に海外に行くと言って音信不通になった。たまにポストカードが送られてくるので、生きていることだけはわかった。
そのときの葉月は結婚の準備でバタバタしていて、英二の失踪に関しては後で聞いた。葉月は自分に何も言わないでいなくなった英二を憎んだ。
英二は葉月と同い年できょうだいのように育ってきた。葉月の初恋は英二だ。
その話を夫も聞いていて、仲のいい英二には愛想良く挨拶をした。
「いい人と結婚したじゃん」
英二は滅多に葉月を褒めないが、この時は素直に感想を言った。
英二の家へ葉月が挨拶しに行くことにした。英二の父が葉月の母ときょうだいなのである。
「おじさん、こんにちは」
「よお、葉月。英二には会ったか?」
「うん」
「そっか。あいつ変わらなかっただろ」
おじさんはニコリと笑って葉月に接する。葉月はその、おじさんの顔がしわくちゃになるのが面白くて好きだった。
「全然変わらないよ。いきなり帰ってきて、第一声が『よお』よ。こっちが馬鹿馬鹿しくなるわ」
葉月は本音をぶちまけた。
しばらくおじさんおばさんと話していると、「ただいま」と英二が帰ってきた。英二はそのまま二階の自分の部屋に下がる。
葉月はその態度についカッとなって英二を追いかける。部屋に入れば、懐かしい英二の匂いがして、一瞬くらりと眩暈がしたようになった。
「英二、いつ帰ってきたの? 連絡も寄越さないで」
「電話番号を変えたのはどこのどいつだよ」
確かに葉月は電話番号を変えていた。
「それとこれとは違うでしょ。おじさんとおばさんにも迷惑かけて」
その言葉に英二は顔を真っ赤にして怒った。
「俺の人生なんだ。俺が決めて何が悪い!」
大声をあげたあと、どかっと床に腰を下ろした。
「それもこれもお前が悪い」
ポツリと溢す英二。葉月はそれを聞き咎めて、
「私が悪いってどういう意味」
食ってかかった。いつも英二とはこのようにほぼ喧嘩のような言い合いをしてしまう。
「お前が…」
「私が?」
「なんでもない」
英二はそっぽを向いた。葉月もそれ以上構うことはなく、実家に戻った。
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