長いキスで始まる夜は、触れられる気持ちよさと共に一気に加速する

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長いキスで始まる夜は、触れられる気持ちよさと共に一気に加速する (ページ 1)

寝室に入る前から私達の夜はもう始まっている。リビングで肩を抱かれるのも、うなじに指を這わされながらキスをするのも、視線が至近距離でぱちっと交わることさえ気持ちがいい。

「ねえ克則、もういいよ。ベッド行こう?」
「んー、もうちょっと」

 克則はキスが好きだ。それもとびきり長いやつ。
 
 ぽってりとした舌はきっと私以上に私の口の中を知っている。歯の一本一本に挨拶をするように優しく撫でては、思い出したように上顎をつついてくるのだ。

「んっ…」

 あまりに長いキスに、終わるころには酸欠みたいになってしまうのが常だった。くらくらとする頭を大きな手がそっと抱えてくれる。
 
 背中を支えてもらいながら寝室へ転がり込む。ベッドに倒れ込んだときには、もうすっかり私は出来上がってしまっている。

「愛子、可愛いね。オレのキス…そんなに良かった?」

 低い声で呟くように告げながら、克則は私のパジャマを脱がせていく。左手で私の頭を撫でながら、片手で器用に服のボタンを外していくのだ。

「分かってるくせに聞かないで」
「分かってるよ。分かってるけど男はいつだって『良かった』って言われたいんだ」
「ふふ、何それ」

 ブラジャーの中にするっと手が入り込む。そこまで大きくないはずの私の胸は、けれども彼に撫でられるとなんだかとても立派なもののように感じてしまう。

「ね、良かった?」

 パンを捏ねるみたいにくるくると優しく回されるのさえ既に気持ちがいい。嬉しそうに笑いながら頬擦りさえしてくれたりするから、尚のこと。

「良かったよ。克則のキスはいつも気持ちいい」
「それはよかった。もっと気持ちよくしてあげる」

 胸に触られるのも、お腹の下へもう片方の手が這っていくのも、何もかも気持ちがいい。酸欠みたいになっている頭はもうそれしか考えられない。克則にも何かしてあげたいけれどいつだってこんな調子だ。少し…申し訳ない気もする。

「ひゃっ! ちょっと急に…あんっ!」
「あれっ、急だった? もっと気持ちよくしてあげるって、ちゃんと言ったつもりだったけど」
「あっあっ、そ、そうだね言ってくれたよね。でも…ああっ!」
「ほら、もっと気持ちよくなるよ」

 中に入った指が容赦なく動く。ここから克則の責めはいつも加速する。キスや肌の触れ合いはもどかしい程丁寧にするのに、お腹の下へと手が伸びてからはいつだって早急だ。前半の優しすぎる克則も、後半の余裕がない克則も、実はどっちも好き。

「ね、入れたい。いい?」
「うん、いいよ。ありがとう」
「へへっ、何が?」
「いつも、優しくしてくれて」

 と、口にしたことはなかった気がするから改めてそう告げてみた。
 
 克則はちょっとだけ驚いたみたいに目を丸くしてから、得意気ににっと口角を上げてみせる。あれっ、ちょっと余計に熱くさせてしまったかもしれない。不安と期待に私の体までぶわっと火照ってしまった。
 今こんなに熱いのに、入れられたらどうなっちゃうんだろう。

-FIN-

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