古い風習を守るお祭りで再会した幼なじみ。真っ直ぐな優しい彼は〇〇だった! (ページ 2)
「え?」
「嫁とりの祭りだからな。ずっとこの日を待っていたよ」
はつねは混乱した。
祭りは山神様の嫁とりだったはず。一晩過ごして終わりでしょ?なんでこの見ず知らずの神主の嫁に?
「よく意味がわからないんですけど…」
「忘れてしまったんだね?昔、この裏で約束しただろう。はつねは山神の嫁になると」
だんだん思い出してきた。
子供の頃、神社の裏で一緒に遊んでいた友達たち。その中に一人だけどこの子か知らない子がいた。体が大きくて誰よりも強くて優しい。お祭りごっこの時、神様役になって、はつねをお嫁さんにする、と言ってた子。
「タケルくん…なの?」
男のたくましい顔がぱあっと明るくなる。
「はつね!覚えていてくれたか!私はあの時の約束を果たすためずっと待ち続けていたよ」
「本当に?タケルくんなの?」
「そうだよ、いつも一緒に遊んだだろう?私はあの時からはつねを娶(めと)ろうとずっと思い続けていた」
タケルは思い出してもらえたことが嬉しくてたまらない様子でニコニコとしている。まるで尻尾をふる犬のようにまっすぐだ。そうか、あの時どこの子かわからなかったけれど、神社の子だったのか。
「そんな、困ります。私仕事もあるし、今回は人がいないからって頼まれて…」
みるみるタケルがしょんぼりとしてきた。うなだれて、犬なら耳もぺたんとなっていただろう。
「そう…か。私はてっきり覚えていてくれたのかと…。そうだな、人間には人間の暮らしがあるからな…」
はつねはうなだれるタケルを見ながら、子供の頃の約束を思い出していた。
「お祭りの夜に迎えに行くよ」
タケルはそう言ったのだった。
「タケルくん、神主さんになったのね?私、全然知らなかった。習い事を始めたりしていつの間にか遊ばなくなっちゃったね」
「私はいつもはつねを見ていたよ。ピアノを頑張っているのも、勉学のために一人で引っ越したのも知っている」
「え?どういうこと…」
「はつねは勘違いしているね。私は神主ではないよ。私が山の神だ。信じられないかもしれないが…」
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