普段はとても優しいカレなのに、とあるキッカケからその目が獣のようにギラつく…

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普段はとても優しいカレなのに、とあるキッカケからその目が獣のようにギラつく… (ページ 1)

カタカタとよどみなく響くキーボードを打つ音。

パソコン画面を見つめる男性らしいがっちりとした背中。

そっと肩越しに仕事具合を見ると、気づいたテツロウが頭を撫でてくれる。

「もうすぐで終わるから、少し待っていなさい」

「は〜い」

耳ごこちのいい声も、優しい口調も、時折見せる年上の余裕も、全部大好き。

テツロウはトウコより6つ年上の30歳。

同じ営業課の主任で、トウコの上司兼恋人。

毎日忙しいテツロウは、今日も家に持ち帰って仕事を処理している。

それでも多忙さを見せないスマートなところがとてもカッコイイ。

のんびりしていて構わないと言われたトウコは、お言葉に甘えてテツロウのベッドでくつろぐ。

仕事をするテツロウの後ろ姿を眺めているのも、大好きだ。

でも、久しぶりに一緒に過ごせるのだから、早く仕事を終わらせてほしいと思ってしまうのが本音だ。

SNSでもチェックしようかとスマホを手に取った時、タイミングよく着信音が鳴った。

「あ…」

画面に表示された名前に思わず声が漏れると、すぐテツロウが振り返った。

「どうした?」

「電話、後輩君から」

後輩君とは、今年新卒で入社したトウコの後輩のことだ。

教育係を任命され、仕事を教えること数ヶ月、彼は持ち前の明るさと言葉の引き出しの多さから、メキメキと営業マンとしての頭角を表してきた。

でもパソコン業務は苦手みたいで、今日もおそらく残業して頑張っているのだろう。

「何か仕事でつまずいているのかも。出てもいい?」

「ああ、かまわないよ」

テツロウの許可をとり、トウコは通話ボタンを押し、スマホを耳に当てた。

途端に鼓膜に響くテンパった後輩君の声に、トウコはくすりと笑った。

パソコンが動かなくなったと泣きつく後輩君に、優しく声を掛ける。

「大丈夫だから落ち着いて。マウスを動かして、カーソルは動く?」

ベッドの上で胡座(あぐら)をかき、後輩君の言葉からパソコンの状況を紐解いていく。

そして解決策を、後輩君でもわかりやすいように噛み砕いて伝える。

そんなやりとりを続けること数分、動いたと電話越しに歓喜の声を上げる後輩君に、私も笑みが零れた。

「よかったね、仕事は一段落つきそう?」

そうやって気遣うと、元気いっぱいの返事が返ってきて、トウコはクスクスと笑う。

この底抜けの明るさは、こっちまで元気になれるから楽しい。

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