想いが実ると信じてホストに貢ぐ風俗嬢の私
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想いが実ると信じてホストに貢ぐ風俗嬢の私 (ページ 1)
「はい、今日のお給料。今日までありがとう。もしまた都合がつくなら連絡してね、愛理ちゃん」
その言葉の後、スタッフから差し出された封筒を手渡しで受け取った。
「ありがとうございます、お世話になりました」
お礼を言って軽く頭を下げて、私は店を後にした。
そしてそのまま近くのビジネスホテルの部屋に戻り、封筒の中身を確認する。
福沢諭吉の顔が書かれた紙が20枚…今日の私の稼ぎは20万円。
想定したより稼げたからか、思わず顔の筋肉が緩むのがわかった。
今日の分を合わせ、ソープの出稼ぎで得た金額は300万弱。
(これだけあれば、守も喜ぶかな…?)
この2週間で稼いだ金額を確認していると、手元のスマートホンが音もなく振動する。
震源を手に取ると液晶画面に表示されていたのは意中の人物、守の文字。
「もしもし、結菜?」
コール音を切って電話に出ると、彼の声が優しく鼓膜を振動させる。
「…守?」
「そう。同伴の時間まで待てなくて電話しちゃった」
「…」
「あっ、信じてないでしょ。本当だよ」
「わかったわかった。ありがとう、嬉しいよ」
「うわっ、完全に棒読み。まあ、それも結菜の魅力だけど」
ストレートに褒められて恥ずかしいやら嬉しいやらで、何の返事もできなかった。
しかし、次の守の問いで一気に現実に引き戻された気がした。
「今日は大丈夫?」
(何だ、やっぱりそっちが本題なんじゃない)
「うん大丈夫。待ち合わせ時間も場所も…」
“お金も”
最後にそのワードが出そうになったが、平静を装いたくて何とか堪えた。
「嬉しい」
「守こそ、私との約束忘れてない?」
「忘れてないし、撤回もしないよ」
「私も嬉しい」
「それじゃあ、また後で」
「バイバイ」
その言葉を最後に、私から通話を切った。
「…はあっ」
乱れた気持ちをリセットするよう、力なく息をついてから私は身支度を始めた。
***
守との出会いは、学生時代の友人に連れられて行ったホストクラブだった。
中性的で美青年って言葉が適切な顔立ち。
モデルみたいに背が高くてスラッとしてて。
浮世離れした完璧な見た目だったけど、それだけじゃない。
上品な所作や言葉遣い。
会話の内容。
テーブルマナー。
他のホストの存在がかすむくらい、言動も仕草も非の打ち所がなくて印象的だった。
そうやって一瞬で守にハマってからは、よくある転落劇だった。
稼ぎが限られる昼の仕事はあっさり辞めて。
ガールズバーにキャバクラと稼ぎのいい夜の仕事を始めて。
でもそれだけじゃ足りなくてヘルス、デリヘルと過激な仕事に転職し。
そして挙句にはソープランドにまで辿り着いて今に至る。
「なにやってるんだろう、私…」
守に出会ってから今日に至るまでの日々を思い出して、ポツリとそんな1人言を溢していた。
相手はホストで、不特定多数の女性を楽しませて売り上げを出すのが仕事。
ソープまでやって指名してシャンパンタワーするなりして、売り上げに協力してエースになっても実りがある可能性なんて皆無に等しい。
それでも気力と体力がある限り、お金を払って尽くし続ければ…
“いつも顔見せてくれるお礼に今夜は、アフターまで付き合ってあげる”
もっと守に近付けて、私の気持ちをくみ取ってくれるかもしれない。
それで気持ちが通じ合って、お互いホストもソープも辞めて対等な恋人関係になって…
そんな日が来るかもしれないと思うと、守に会いに行けずにはいられなかった。
「お待たせ」
脳内で幻想と現実の間を往復していると、意中の人物が声と共にこっちに向かって来るのが見えた。
「待ってないよ」
「よかった。じゃあ、行こっか」
営業スマイルか否か子供のような無邪気な笑みを浮かべて言うと、私の手をさり気なく握ってこの場を後にした。
(やっぱりいいなあ…)
私の心身が現実から完全に引き離された。
***
同伴に店でのオープンラストと守と過ごす時間はあっという間で、残すはずっと楽しみにしていたアフターのみとなってしまった。
守とのアフターは初めてで店で楽しんだ余韻も手伝ってか、私の気持ちは遠足前日の子供のように浮き足立っていた。
それと同時に、何だか一種のノルマを達成して報われた気持ちにもなった。
(下着も服も新しくて一番いいやつを着てきた、身なりもこれ以上ないくらい整えた…)
「終わった、行こうか」
同伴の時と同じ私服姿で店から出てきた守と、私はこの場を後にした。
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