副業ではじめたのはアロママッサージのアルバイト。常連のイケメンおじさんといい感じになっちゃって……?

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副業ではじめたのはアロママッサージのアルバイト。常連のイケメンおじさんといい感じになっちゃって……? (ページ 1)

――お金がない。

 会社でのお昼休憩時。

 私、芽衣子は自販機を前にして絶望する。

 当然、お茶の一本や二本は買える。しかし、この重たい財布には……ポイントカードと小銭しか入っていない。

「……別に浪費癖があるわけじゃないのになぁ」

 二十代の独身女子が都会で一人暮らし。と、言えばバリキャリが連想されるかもしれないが、実際の私は契約社員。頑張って働いても昇格もボーナスもないのが現状だ。

「やっぱ転職しないとまずいかなぁ……でも、職務内容も人間関係もサイコ―なんだよなぁ……」

 いっそブラックだったらさっさと辞めてやるのに、と思う。

「あーぁ。宝くじ当たらないかなぁ」

 私は一人寂しく呟き、自販機のお茶を諦めた。この百六十円が明日の私の生活を変えるかもしれない。

 ふと、携帯電話で時刻を確認する。

「あ……今日って、バイトの日か……」

 私は口元が緩むのを感じた。

 そう、毎週木曜日の夜。

 金欠を理由にしぶしぶ始めた副業が、私の一週間の楽しみになっている。

   *

 私は会社を定時で退社すると、駅前のアロママッサージ店に直行する。

 店長に挨拶をすると「芽衣子さん、六時から渋谷さんの予約が入っているよ」と声がかかった。

「あ、あと新作のアロマがあるんだ。ちょっと嗅いでみて」

 手渡された小瓶には、とろりとしたオイルが入っている。嗅いでみると

「わぁ! いい匂い!」

 甘くて、少しスパイシーな香りがした。

 お客さんも気に入る気がする!

 私は弾む気持ちでタオルなどの準備を整える。

 個室マッサージって聞いた時、「もしかしてヤバイ店?」って心配したけれど、お客さんは仕事帰りのOLさんが多めで、いい人ばかりだ。

 そんな中、私を指名してくれる渋谷さんはちょっと異色のお客さん。

 多分四〇代くらいのオジサマなんだけれど、丁寧で物腰が柔らかく、すごく聞き上手。そしてイケメンだ。なんというか、紳士という言葉がすごく似合う。

 お店には会社のみなさんとノリで来てくれたのが最初なんだけれど、こうして週一の常連さんになってくれるとは驚きだ。

 そうこうしているうちに六時を迎え、ロビーに渋谷さんが現れた。

「お疲れ様です。お待ちしておりました!」

「こんばんは。芽衣子さんは今日も元気ですね」

 ふふっと優しく微笑まれると、なんだか心臓が早くなる。紳士的な大人の男性なのに、こうして屈託なく笑う表情は少年みたいだ。

「そ、それだけが取り柄ですもん。今日はどこからほぐしていきましょうか?」

「今日も肩をお願いできるかな。パソコン作業が長いせいかもうガチガチで……」

「かしこまりました。では蒸しタオルを使用したいので、お着替えを準備しますね」

 渋谷さんにシャツを渡して着替えて貰う。

 その間にマッサージ用のオイルと蒸しタオルを準備した。

 着替えが済んでいることを確認し、私は腕を捲る。渋谷さん自体は会うのが楽しみなお客様だけれど、渋谷さんの肩は超強敵なのだ。

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