アイドル系の隣人はSMグッズのメーカー社員。試作品の実験台にされる私…
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アイドル系の隣人はSMグッズのメーカー社員。試作品の実験台にされる私… (ページ 1)
私はそこそこ重い段ボールを抱えて、隣室のチャイムを鳴らした。
心臓は常になくドキドキと激しく脈打っていた。
抱えている段ボールからは熟した果実の甘い匂いがしている。
チャイムを鳴らして十数秒。インターフォンによる応答ではなく、玄関の扉が開き、直接隣人が顔を見せた。
私の心臓がいっそう強く跳ねた。
「あれ、お隣の…」
「突然ピンポンしてごめんね。実家からアホほどマンゴーが届いて…、嫌いじゃなければ、いくつか貰ってほしんだけど…」
隣人の顔をまともに見ることもできず、私は深々と頭を下げたまま、一気にまくし立てた。
返事が来るまでのたった数秒、やっぱり図々しすぎただろうか、迷惑なオバサンと思われただろうか、という思いが頭の中をぐるぐる巡る。
長らく空いていた隣の部屋に人が引っ越してきたのは、先週のこと。
ご挨拶に、と粗品の洗剤を持って私の部屋へやってきたのは、めちゃくちゃかわいい、アイドル系の男の子だった。
背は私よりちょっと高いくらい。肌が白くて奇麗で、くるくるふわふわの髪の毛で、何よりも笑った顔がキュートだった。
「僕の名前はマサキって言います。一人暮らしは初めてなので、よかったらいろいろ教えてください」
「あ、私は涼子です。よろしくね」
「涼子さん、あなたにピッタリな奇麗な名前ですね!」
両手で手を握られ、にっこりと笑われて、心臓を撃ち抜かれない女はいるのだろうか。いや、いない。ソースは私。
その衝撃の出会い以降、私は隣の部屋が気になって仕方なかった。
築三十年のこのアパートは、耳をすませば簡単に隣の部屋の物音が聞こえてしまう。
食事は自炊派、入浴時間は短め。朝は弱いのか目覚まし時計が何度鳴っても起きられない。とマサキくんのデータを蓄積していく度、私って痛いオバサンだな…、と自己嫌悪に陥った。
気にしないように、気にしないように、と思うほどに気になってしまう。
そこへ実家からのマンゴーが届き、話は冒頭に戻る。
「嬉しい。俺マンゴー大好き!」
にこっと太陽みたいな笑顔を向けられる。私はあまりの眩しさに直視することができなかった。とりあえず迷惑そうな対応をされなくてよかった。
「でも俺、マンゴーの剥き方わかんない…」
「わ、私でよかったら剥くし! 剥き方も教える!」
「まじで? やったー。じゃあ、さっそくだけど入って入って!」
「えっ…ええええええ!?」
玄関のドアを大きく開かれて、中へ招かれる。まさかの棚ぼた状態に私の思考はフリーズした。
戸惑いながらも、せっかくのお招きを邪険にするなんて考えられず、私はマサキくんの部屋の中に入る。
カチャリと私の後ろで、鍵が閉まる音がした。
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