絵画教室の先生の言葉責めと絵筆の悪戯に、私の体が言うことを聞かなくなってしまう (ページ 3)
太田先生の仕事場は、他の部屋とは完全に違っていた。扉を開けると、六畳ほどのスペースに新聞紙や絵の具、絵筆が散乱していた。その奥に未完成の絵が見える。
ツンとした絵の具の匂い。湿っぽいような、陰気な空気。孤独との戦いのようなこの場所で何時間も作業をしたら、気が狂いそうだと千尋は思った。
「先生、何時間くらい描くんですか?」
「そうだな、四時間ほど?」
「なんか、暗い気持ちになりませんか?太陽の日差しを浴びたい!とか」
「ははっ、そんなことはないよ」
「へー、そうなんですか」
「ねぇ、千尋ちゃん、そこに座って」
「はい」
太田先生が、なぜか置かれていたパイプ椅子に座るよう千尋に言った。
「こっちを見てて」
「はい…」
太田先生は立ったままスケッチブックに千尋を描き始めた。いつもの絵画教室の先生のはずが、どこか違って見える。
ジャケットを脱いだ太田先生の上半身が意外と筋肉質なところだろうか。
鉛筆を持つ太田先生の腕から手のラインが滑らかで綺麗なところだろうか。
ふと気がつくと、太田先生も千尋をじっと眺めていた。
「ねぇ、君も僕に惹かれているよね」
千尋は耳を疑った。太田先生が千尋に惹かれている前提の話のようだが、聞き間違いかもしれない。だから、答えられずに黙ってしまった。
太田先生が近付いてくる。
「上、向いて…」
顎をくいっとあげると、そのまま太田先生が唇を重ねた。薄い唇がぶにゅっと千尋の唇に吸い付いたような、このままずっとキスをしていたいと思うほどうっとりしてしまう。
太田先生が顔を離す。魔法にかけられたような千尋だが、太田先生は何事もなかったかのように、元の場所へ戻りまた千尋を描き始める。
千尋の口は半開きのままだ。夢かと思う一瞬の出来事にどう反応すればいいのかわからない。ただ、下半身がじんじんと熱くなっている。
おまけに太田先生の視線が千尋の隅々まで突き刺さっている気がして、妙な気持ちになり昂ぶり始めてしまう。
「千尋ちゃん、少し脱いでみる?ワンピースの下は何か着てる?」
「キャミソールを…」
「じゃあ大丈夫だね」
「は…、はい…」
完全に太田先生のペースだった。全身がぞくぞくするほどの高揚感。千尋はワンピースのジッパーを下げ、まるで自分が女優にでもなったかのように、挑発的にゆっくりと脱いだ。
「ほおっ…」
太田先生の声がした。いかにも下着ですと言わんばかりのベージュのキャミソールが、太田先生の興奮をも上げる。ワンピースを丁寧に畳むふりをして、千尋は精一杯、太田先生にお尻を突き出し体のラインをアピールしていた。
「恥ずかしい?」
「…はい」
「すごくいいよ」
「…はい」
ただ見られているだけの興奮。千尋はどうやってもう一度キスをおねだりするかを考えていた。その表情はきっと虚ろだったのかもしれない。
「どうしたの?」
「いえ、別に…」
「言ってみて」
「何もないです」
太田先生がまた千尋に近づいてきて、ぎゅっと抱きしめると今度は荒々しく唇を奪った。
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