「僕がいじめてるみたいじゃない」
利人さんが苦笑いを浮かべて、わたしを覗き込む。
柔らかい視線に胸が苦しくなった。
「具合は大丈夫?」
「だい、じょうぶ…っ…」
子供みたいな返事が恥ずかしい。
「お腹、ちょっと触診してもいい?」
「はい…」
ブラウスの釦を外して、利人さんの手を迎えた。
熱い手がみぞおちを軽く押す。
「痛い?」
「痛くない」
わたしはすんすんと鼻を啜りながら答えた。
むしろ、手のひらの熱が気持ちいい。
「うん。もう大丈夫みたいだね」
利人さんが手を離そうとする。
それが、堪らなく淋しくて、わたしは思わず大きな手を捕まえてしまった。
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