風邪をひいてかかりつけの病院を受診したら―大人の余裕に隠れたSな町医者 (ページ 4)
「19時までは待つから、それまでに来なさい」
有無を言わさない響き。
怖いと思う心の奥底が、じんわりと熱を孕んだ。
中学生の頃も同じようなことがあったのを思い出す。
夏が終わって、いよいよ受験シーズンにさしかかった頃で、わたしは焦っていた。
寝る間も惜しんで勉強をして、秋口の気温のせいで風邪を引いたんだ。
その時も利人さんに診てもらった。
温かい手がお腹を触るのが気持ちよくて、すごくドキドキしたのを思い出す。
「中学生の頃と何も変わってないね。無理をして体を壊す」
診察時間を過ぎた病院には利人さんしかいなくて、お説教が静かな診察室にキンと響く。
「ごめんなさい」
「千星ちゃんは、すぐそうやって自分を責めるから困る」
溜息交じりの声がひどく優しい。
「怒ってるんじゃなくて、心配してるんですよ」
大きな手のひらが頭をぽんぽんと撫でた。
中学生の時も同じことをされたっけ。
子供扱いされたみたいで嫌だったけど、今は…
「お願いだから無理しないでください」
「…はい」
気づいたら、涙がぼろぼろと膝に落ちた。
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