風邪をひいてかかりつけの病院を受診したら―大人の余裕に隠れたSな町医者 (ページ 2)
「中学生だった千星ちゃんが、立派なOLさんになったんだね」
『千星ちゃん』そう名前を呼ばれた時、目の前のお医者さんが誰か分かった。
「お兄ちゃん先生…利人さん?」
「やっぱり分かってなかった?僕、少し太っちゃったからね」
確かに昔よりはしっかりとした体つきになっていたけれど、よく見ればお兄ちゃん先生と呼ばれていた利人さんだ。
おじいちゃん先生の息子さんで、大学病院に勤めていると聞いていた。
「戻ってきたんだ…え、おじいちゃん先生は?」
思わぬ再会はうれしいけれど、不安も頭を過った。
「元気だよ。元気なうちに引退して、好きなだけ鉄道オタクをやりたいってさ」
「そっか。良かった」
ほっと息をついたわたしを、利人さんが優しく見つめる。
「千星ちゃん、本当に大人になったんだね」
「もう立派なアラサーだから」
「僕も年をとるはずだ。いけない。おしゃべりし過ぎだ。念のためにエコーを見てみようか」
促されて診察ベッドに横になる。
Tシャツを捲る瞬間、すごくドキドキした。
看護師さんが塗ったジェルの冷たさで、ちょっとだけ落ち着きを取り戻す。
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