「もっと、エロい音、聴かせて」売れないミュージシャンにかき鳴らされる身体 (ページ 3)
「もし、俺がこのまま売れなくても、リコさんは側にいてくれます?」
弱っているだけなのか、甘えたいだけなのか。
どちらだとしても、私を必要としてくれるのが、たまらなくうれしい。
「うん。私はずっと、カイの歌を聴くよ」
「ありがとう」
カイがうっすら涙ぐんだ。
感激屋で、泣き虫なカイが愛しくて困る。
「そんな顔しないでよ。抱きしめたくなっちゃうじゃん」
だけど、私はただのファン。
カイの恋人でも家族でもない。
「リコさんに抱きしめられたい」
居酒屋の喧騒に紛れて、カイが呟く。
「私でいいの?もっと若くて可愛い子にしたら?」
「リコさんが、いいんす」
甘える視線を振り払えず、私はカイと一緒に店を抜け出した。
「他のファンにも、こういうことしてると思ってる?」
手近なラブホテルのベッドの上、私を抱きしめながらカイが囁いた。
「思わないよ」
カイがそういう人間じゃないことは知っている。
「でも、こうなったからって、恋人になれる訳じゃないんだろうなっては思ってる」
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