夕暮れの教室、憧れていた恩師と一度きりの過ち
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夕暮れの教室、憧れていた恩師と一度きりの過ち (ページ 1)
「横田先生!」
高校の卒業式。
「どうした、水谷?」
「あの、えっと…」
「ずっと好きでした…」
私は担任だった横田先生を呼び止めて、3年分の想いをぶつけた。
叶うはずなんてない、でも伝えなきゃ後悔する。
「ありがとな、水谷」
私の頭をポンポンと撫でる先生。
困らせてしまう事は分かっていたのに、横田先生は目を細めて、とても暖かい目で私を見ながら話す。
「お前が無事に教育大に受かってくれて、それだけで俺は嬉しいよ」
「それは…横田先生みたいに、生徒1人1人と向き合う教師になりたいと思ったから…」
「はは、余計に嬉しいな。教師冥利に尽きるってやつ?水谷が立派な教師になるのを楽しみにしてるからな」
夕陽の逆光でよく見えなかったけれど、横田先生はいつもの優しい笑みで私を送り出してくれた。
その優しい笑顔が本当に大好きだったけれど…この日私は3年間の想いからも卒業した。
大学生活はとても目まぐるしくて、私は横田先生への想いが薄れていくのを感じていた。
同じように教師を目指す、とても優しい彼氏もできた。
そこに横田先生の姿を重ねていないといえば嘘になるかもしれないけれど、私を大事にしてくれる。
毎日がすごく充実していた。
年次も上がり、ついに教育実習が始まることとなった。
「わぁ、久しぶり…」
ほんの数年しか経っていないはずなのに、教室に並べられた机が小さく見える。
「おっ、水谷じゃないか!」
その声に心臓が軽く跳ね上がる。
ゆっくり振り返ると、そこには…。
「横田先生、お久しぶりです…」
かつての恩師が立っていた。
「実習先、ここを選んだんだってな!またお前が教え子になるなんてなぁ」
私の頭をポンポンと撫でる。
「もぉ、まだ子供扱いするんだから!でも、また横田先生に教えて貰えるのが嬉しい。よろしくお願いします」
「ん、こちらこそよろしくな」
私の頭を撫でていた手を引っ込める。
その左手の薬指には…あの頃なかったモノが光っていた。
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