私はあなただけの女。でも、あなたは彼女のもの。わかっているのに、この気持ちは止められない。 (ページ 2)
今思えば、私を酔わせたのは、お酒ではなく、大人の色香だったのだろう。
洗練された仕草に、言葉巧みな誘惑。
端正な顔立ち。
気が付いた時には、ビジネスホテルのツインルームにいた。
処女ではなかったけれど、本当の快楽というものを知らなかった私に、それを教えてくれたのは、博人だ。
まだ幼かった私の中を、博人の持つ大人の色香が、毒のように駆けめぐった。
当時、彼は39歳で、21歳だった私にとっては、大人の男の人そのものだった。
それから10年間、私たちはこの店で待ち合わせている。
仕事が早く引けた日は、必ずと言っていいほど、誘いのメッセージが来る。
私の都合で断らざるを得ない時も多いけれど、彼はそれで気を悪くするほど、子供っぽくはない。
都合をつけてここへ来ると、彼は必ずと言っていいほど、店の片隅の仄暗いテーブル席でシングルモルトをロックで飲みながら、私を待っていてくれる。
カクテルしか知らなかった私も、いつしか彼と同じシングルモルトをロックで飲むようになっていた。
からん…と音を立てた、グラスの中の氷の音で、私は我に返った。
「来てたのか」
同じタイミングで私の隣に座ったのは、博人だった。
体ごとこちらに顔を寄せて、彼は言った。
「今日まで散々断っておいて、ひとり酒か」
「忙しかったのよ。今日はたまたま早かっただけ」
彼は財布を出して、私のお会計を済ませてくれた。
「…行こうか」
行き先は、博人が常宿にしているビジネスホテルだ。
私が行くことを想定して、ひとりで泊まる時もツインルームを取る。
「おいで…」
博人は腕を広げる。
私を抱きしめた彼は、ゆっくりとキスをした。
服の上から体をまさぐられ、手を股間に導かれる。
すでに膨らみ切ったそれが無性に欲しくて、私は自分からベルトに手をかける。
彼はズボンを下ろしながら、私に体を任せてくれる。
この10年、私は博人を喜ばせるための性の技巧を、教え込まれていた。
彼のツボなら、知り過ぎるほど知っている。
お腹に付きそうなほど反り返ったその裏筋を、舌先でなぞる。
先端やくびれまで、丹念に舐め回す。
「志穂…上手だよ」
いつの間にか全裸になった博人は、私の髪を撫でてくれた。
「あの時の可愛らしいお前は、いつ、どこへ行ったのかな…」
あなたの毒が、あの時から全身を回っているの…。
心の中でそう答えて、口に含んだまま、彼を見上げる。
浮かべている妖しい微笑みは、10年前と変わらない。
「志穂、脱げよ」
博人は、セックスに時間をかけるのが好きだ。
脱げと言われて、さっさと脱ぎ捨てるようでは、彼の情欲をそそらない。
私は、ゆっくりと服を脱ぐ。
下着姿の私に覆い被さり、巧みに片手で金具を外した博人は、ショーツの中に繊細な指を滑り込ませた。
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