失恋で傷ついた心ごと大切に優しく癒やしてくれるセラピスト (ページ 4)
「仕事は?」
「今日は休み。」
「そっか。」
平日の昼間に休めるのだから、お堅い仕事ではない。
「お待たせしました。」
「あぁ、どうも。」
少し急いだ素振りで、まだだいぶ残ったそれの火を消す。
子供みたいなキラキラした目をして、
「いただきます。」
ショートケーキを頬張る口をじっと見つめた。
唇に少し残るクリームの白と生ぬるい唇のピンク。
「うん?どうかした?」
「あ、いや、クリーム、ちょっと口についてるよ。」
「あぁ…」
慌ててクリームを舐める舌の水々しいピンク。
「取れた?」
「あ…うん。」
返事をするのがやっとだった。
章彦さんがケーキを食べおわるまでの、短い時間は随分と長かった。
窓の外を見つめてみるのだけれど、どんなに目線を逸らしても、カラダが唇を見つめてしまうようで落ち着かない。
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