図書館で見かけるあの人が、元カレと鉢合わせそうになるから… (ページ 3)
「…どうかしました?」
「元カレが…。今図書館の中に」
自分の肩を抱いたその顔は青ざめている。
「彼の激しい束縛に耐え切れなくて別れたんです。彼はずっと私のことを探しています。もう2年も前に別れたのに」
ガタガタと震え始めた彼女を守らなくては!と思った。
「来て!」
彼女の腕を引き、奥の本棚に移動した。
カツカツ…
彼が近づいてくる。
本を借りに来ただけなのか、彼女を探しに来たのかは分からない。
カツカツ…
革靴の音がすぐ側で聞こえた。
このままでは隠れていても見つかってしまう。
「…きゃっ!」
僕は彼女を抱きしめた。
そして耳元で囁く。
「静かに。彼が行くまでだから」
コクンと頷く彼女。
ドクドク…
お互いの鼓動が聞こえそうなほど心臓が高なっていた。
「……唯?」
彼がそう名を呼んだ。
おそらく彼女の名前だろう。
その瞬間、僕は彼女に口づけをした。
背中に彼の視線を感じた。
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